-安全性薬理試験及び毒性試験-

安全性薬理試験1)

(1)中枢神経系、心血管系及び呼吸器系に対する作用(ラット、イヌ、in vitro

項目 評価項目・方法等 動物種/系統 投与経路 投与量 性別及び例数 特記すべき所見
中枢神経系 Irwin試験 ラット
(Wistar)
経口 0、100、500、2000mg/kg
単回投与

6例/群
影響なし
心血管系 hERG電流 hERG導入
CHO-K1細胞
in vitro 0、0.3、1、3、10、30、100μM 外向き及び内向きテールhERGカリウム電流に対するIC20、IC50:100μM(35.4μg/mL)超
心電図、心拍数、血圧、体温 イヌ
(ビーグル)
経口 0、10、30、100mg/kg
単回投与
雌雄
各4例/群
すべての用量で血圧の軽微な低下(3~6%)
イヌ
(ビーグル)
経口 0、15、70、200mg/kg
単回投与
雌雄
各4例/群
70mg/kg以上で心拍数8〜9%減少、
すべての用量で血圧2~7%低下a)
呼吸系 呼吸数・一回換気量 ラット
(Wistar)
経口 0、100、500、1680mg/kg
単回投与

8例/群
1680mg/kgで一回換気量が約20%減少
a)軽微かつ回復性が認められ、用量相関性も認められなかったことから、有害な変化ではないと判断

(2)腎・泌尿器系及び消化器系に対する作用(ラット)

項目 評価項目 動物種/系統 投与経路 投与量 性別及び例数 特記すべき所見
腎・泌尿器系 尿量・尿中電解質濃度 ラット
(Wistar)
経口 0、100、500、2000mg/kg
単回投与

10例/群
2000mg/kgでナトリウム/クロライドの尿中総排泄量が一過性に増加、カリウムの尿中総排泄量が一過性に減少
消化器系 胃内容排出・腸通過 ラット
(Wistar)
経口 0、100、500、2000mg/kg
単回投与

10例/群
500mg/kg以上で胃内容排出量が減少
2000mg/kgで腸内移動距離が減少

毒性試験2)

(1)単回投与毒性試験(マウス、ラット、イヌ)

動物種/系統 投与経路 投与量
(mg/kg)
性別及び例数 概略の致死量
(mg/kg)
主な所見
マウス
(CD-1)
経口 0、100、500、
2000
雌雄 各5例/群 >2000 2000mg/kg:白色便a)(雌雄)、体重低値(雌)
ラット
(Wistar)
経口 0、100、500、
2000
雌雄 各5例/群 >2000 ≧500mg/kg:白色便a)(雌雄)
2000mg/kg:膀胱結石、膀胱における移行上皮過形成・化膿性炎症・結晶・表在性壊死・平滑筋壊死(雌)
イヌ
(ビーグル)
経口 0、30、100、
300、1000
(用量漸増、
1日1回投与)
雌雄 各1例/群 >1000 300mg/kg:軟便、粘液便(雄)、嘔吐(雌雄)
1000mg/kg:摂餌量低値、無便(雄)、嘔吐(雌雄)
a)白色便は未吸収のゲーファピキサントによるものであり毒性と判断されていない。

(2)反復投与毒性試験(マウス、ラット、イヌ)

動物種 投与経路 投与期間
(頻度)
+回復期間
投与量
(mg/kg/日)
性別及び例数
(回復期間)
無毒性量(mg/kg/日)
[AUC0-24hr比、
Cmax比]a)
主な所見
マウス
(rasH2)
経口 4週間
(1日2回、 12時間間隔)
0、150、500、1500 雌雄
各10例/群
500 1500mg/kg:計画外の死亡、腎盂の炎症、尿細管上皮の変性/再生、尿管及び膀胱の炎症、平均総白血球数及び平均リンパ球数の減少
経口 4週間
(1日2回、 7時間間隔)
0、150、500、1500 雌雄
各10例/群
≧1500 有害な所見なし
マウス
(CD-1)
経口 13週間
(1日2回、 7時間間隔)
0、150、500、1500 雌雄
各25例/群
≧1500 有害な所見なし
ラット
(Wistar)
経口 28又は
29日間
(1日1回)

回復期間
29又は
30日間
0、100、500、2000 雌雄
各15例/群
(29又は30日間、雌雄
各5例以下/群)
雌:100
雄:≧2000
2000mg/kgの雌: 腎重量の増加、尿路での結晶形成及び蓄積に関連した尿路の病理所見、病理所見に関連したその他の所見
≧500mg/kg以上の雌: 尿路での結晶形成及び蓄積に関連した尿路の病理所見
雄:有害な所見なし
回復期後:結晶形成に関連する尿路の変化はなし
経口 29日間
(1日3回)

回復期間
14日間
0、300、500、675、900 雌雄
各12-17例/群
(14日間、0、675、900の雌雄各5例以下/群)
雌:500
雄:≧900
900mg/kgの雌:計画外の死亡、体重減少、摂餌量の減少、結晶に関連した尿路の病理所見、病理所見に関連したその他の所見
675mg/kgの雌:円背位、糞少量、体重減少、結晶に関連した尿路の病理所見、病理所見に関連したその他の所見
雄:有害な所見なし
回復期後:900mg/kgの雌:腎臓の病変(腎臓での結晶の蓄積を含む)並びに尿管及び膀胱の所見(1例)回復性あり。結晶尿は675mg/kgの雌1例最小スコア(結晶1~10個/視野)を除いて回復期間中に消失
経口 12週間
(1日3回)

回復期間
4週間
0、225、450、1200/675
(雄/雌)
雌雄
各12-17例/群
(4週間、0、 450、1200/
675の雌雄各5例/群)
450 1200mg/kgの雄: 計画外の死亡、体重及び体重増加量の減少、腎重量の増加、結晶に起因する尿路の病理所見、病理所見に関連したその他の所見、平均総白血球数、好中球数及び単球数の増加、リンパ球数の減少、心筋変性
675mg/kgの雌:腎重量の増加、結晶に起因する尿路の病理所見、病理所見に関連したその他の所見
≧225mg/kg: 結晶尿(225及び450mg/kgでは腎障害を伴わない)
回復期間中:1200mg/kgの雄:切迫屠殺(1例)、心筋変成・壊死、腎障害に関する毒性所見
回復期後:腎障害を伴わない結晶尿は部分的に回復
経口 26週間
(1日3回)

回復期間
8週間
0、75、225、450 雌雄
各20-30例/群
(8週間、0、225、450の雌雄各10例/群)
225
[4倍、7倍]
450mg/kg:結晶を伴った尿路の病理所見、病理所見と関連した臨床病理学的所見
≧225mg/kg:唾液腺重量の増加、唾液腺腺房細胞の空胞化
≧75mg/kg: 尿中結晶(75及び225mg/kgでは腎障害を伴わない)
回復期後:結晶、臨床病理学的変化、唾液腺、膀胱、尿管の所見は回復、腎臓の所見は回復傾向
イヌ
(ビーグル)
経口 4週間
(1日1回)

回復期間
4週間
0、15、70、300 雌雄
各5例/群
(4週間、雌雄各2例/群)
≧300 300mg/kg:嘔吐、白色便、黄色便
回復期後:回復性あり(被験物質に関連した所見なし)
経口 12週間
(1日2回)

回復期間
4週間
0、40、100、200 雌雄 各4-6例/群
(4週間、0、100、200の雌雄各2例/群)
40 200mg/kgの雄:顔面膨張
200mg/kgの雌:腎臓の所見(片側性の結石)(2例)、膀胱結石(うち1例)
≧100mg/kg:結石を伴った尿路の病理所見
回復期後:腎臓及び膀胱の病理所見は一部に回復性あり
経口 39週間
(1日2回)

回復期間
8週間
0、25、50、100 雌雄
各4-6例/群
(8週間、0、25、50の雌雄各2例/群)
50
[26倍、25倍]
100mg/kgの雄:尿中赤血球高値、腎皮質尿細管限局変性
≧25mg/kg:尿中角柱状結晶、尿混濁回復期後:回復性あり(被験物質に関連した所見なし)
a) 日本人の治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者にゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与したときのAUC0-24hr:7664ng·hr/mL及びCmax:538ng/mL(母集団薬物動態解析)

(3)生殖発生毒性試験

1)
受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験(ラット)
動物種 投与期間 投与経路 投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
[AUC0-24hr比、Cmax比]a)
主な毒性所見
ラット
(SD)
雄:交配前28日から剖検前日
雌:交配14日前から妊娠7日
経口 0、120、300、675
(1日3回投与)
雄:≧675
(225mg/kg 1日3回)
[10倍、18倍]
母動物:
(一般毒性)300
(100mg/kg 1日3回)
[7倍、9倍]
(生殖能)≧675
(225mg/kg 1日3回)
初期胚発生:≧675
(225mg/kg 1日3回)
雄:影響なし
母動物:675mg/kgで軽度の脱水、円背位、腎盂の拡張(1例)
初期胚発生:影響なし
a)日本人の治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者にゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与したときのAUC0-24hr:7664ng·hr/mL及びCmax:538ng/mL(母集団薬物動態解析)
2)
胚・胎児発生に関する試験(ラット、ウサギ)
動物種 投与期間 投与経路 投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
[AUC0-24hr比、Cmax比]a)
主な毒性所見
ラット
(SD)
雌:妊娠7~17日
帝王切開:妊娠21日目
経口 0、120、300、675
(1日3回投与)
母動物:300
(100mg/kg 1日3回)
[7倍、9倍]
胚・胎児発生:300
(100mg/kg 1日3回)
母動物:675mg/kgb):体重増加量の顕著な減少、絶対及び相対摂餌量の減少
胚・胎児:675mg/kgb):胎児体重の軽度な減少
ウサギ
(NZW)
雌:妊娠7~19日 帝王切開:妊娠29日目 経口 0、100、400、1500
(1日1回投与)
母動物:400
(400mg/kg 1日1回)
[24倍、86倍]
胚・胎児発生:≧1500
[37倍、88倍]
母動物:1500mg/kg: 流産(1例)、体重減少、摂餌量減少
胚・胎児:影響なし
a)日本人の治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者にゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与したときのAUC0-24hr:7664ng·hr/mL及びCmax:538ng/mL(母集団薬物動態解析)
b)日本人の治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者にゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与したときのAUC0-24hr:7664ng·hr/mL及びCmax:538ng/mL(母集団薬物動態解析)に対して、AUC0-24hrで12倍、Cmaxで20倍の曝露量となる
3)
出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験(ラット)
動物種
/系統
投与期間 投与経路 投与量
(mg/kg/日)
無毒性量
(mg/kg/日)
[AUC0-24hr比、Cmax比]a)
主な毒性所見
ラット
(SD)
雌:妊娠6日~分娩後 20日 経口 0、120、300、675
(1日3回投与)
母動物の一般毒性:120(40mg/kg 1日3回)
(生殖能)≧675
(225mg/kg 1日3回)
母動物の生殖能:≧675
(225mg/kg 1日3回)
[12倍、20倍]
F1出生児:≧675
(225mg/kg 1日3回)
母動物:675mg/kg:死亡(2/24例)、脱水の可能性、円背位、運動機能の低下、立毛、摂餌量の低下、体重増加量の減少、低い発現率で腎臓(拡張及び斑紋)及び尿路(尿管と膀胱の結石を伴う膨張)の所見
300mg/kg:体重増加量の減少
母動物の生殖能:影響なし
F1出生児:675mg/kg:同腹児全例死亡b)
a)日本人の治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者にゲーファピキサント45mgを1日2回反復経口投与したときのAUC0-24hr:7664ng·hr/mL及びCmax:538ng/mL(母集団薬物動態解析)
b)母動物毒性に起因する哺育不良によるものであり、母動物の生殖能又は出生児に対するゲーファピキサントの影響ではないと判断

(4)その他の特殊毒性試験

1)
遺伝毒性試験(in vitro、ラット)

ゲーファピキサントのin vitro試験では、細菌を用いた復帰突然変異試験(Ames試験)及び培養ヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験はいずれも陰性でした。
また、ラットを用いたin vivo試験では、小核試験[雌雄Wistar Hanラット(各5例/群)にゲーファピキサント0、100、500、2000mg/kgを1日1回2日間経口投与]は陰性であり、小核誘発作用は認められませんでした。

2)
がん原性試験(マウス、ラット)

雌雄rasH2トランスジェニックマウス(各30例/群)にゲーファピキサント15、50、250mg/kgを1日2回、約6ヵ月間強制経口投与し、がん原性を評価した結果、いずれの用量でもゲーファピキサントによるがん原性は認められませんでした(無毒性量≧500mg/kg/日)。
雌雄Wistar Hanラット(各60例/群)にゲーファピキサント0(水又は媒体)、15、50、150mg/kgを1日2回2年間反復経口投与し、がん原性を評価した結果、雌雄ともにゲーファピキサントによるがん原性は認められませんでした(無毒性量≧300mg/kg/日)。

3)
光毒性試験(in vitro

3T3線維芽細胞のニュートラルレッド取り込み法を用いたin vitro試験では、ゲーファピキサント0.49~300μg/mLの濃度範囲において、UVA照射後の光毒性は認められませんでした。

4)
局所刺激性試験(in vitro

ウシ摘出角膜を用いたin vitro試験では、角膜を20%ゲーファピキサント調整液0.75mLで処理し、混濁度及びフルオレセインナトリウムの透過性を測定した結果、眼刺激性は認められませんでした。
MatTek EpiDermTM組織試料を用いたin vitro試験では、組織をゲーファピキサント100mgで1、4及び24時間処理し、メチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)の取り込みと還元反応により組織の生存率を評価した結果、皮膚刺激性は認められませんでした。

5)
結晶尿評価試験(ラット、イヌ)

ラットにゲーファピキサント2000mg/kgを単回投与したところ、角柱状及び球晶の尿中結晶は、ラマン分光法においてスペクトルが被験物質と一致しましたが、楕円状及び三角状の結晶は一致しませんでした。
また、ラットを用いた別の試験では、尿のpHを下げるために飼料に塩化アンモニウムを追加したところ、pHの変化により結石形成に対する防御効果は確認されませんでした。
ラットにゲーファピキサントを1日1回又は1日3回、14日間経口投与したときの尿路での結晶形成に及ぼす影響は、AUCが146000ng·hr/mL未満のとき、尿路障害の発現率はAUCよりもCmaxに関連する可能性が高いことが明らかになりました。233mg/kgを1日3回を動物に投与したとき、2000mg/kg/日を投与した場合と同程度のAUC及びより低いCmaxでしたが、233mg/kg 1日3回の結晶性尿路障害の発現率(15例中1例)は2000mg/kg/日(15例中7例)よりも低くなりました。
イヌにゲーファピキサント70mg/kgを単回投与したところ、尿中に角柱状及び非晶質の2種類の結晶が形成されました。顕微分光学的評価では、角柱状の結晶のスペクトルが被験物質に一致しましたが、非晶質結晶では一致しませんでした。


  1. 1) 承認時評価資料:安全性薬理試験
  2. 2) 承認時評価資料:毒性試験

禁忌を含む注意事項等情報につきましては電子添文をご参照ください。