-国内第Ⅲ相長期投与試験-

日本人患者に長期投与した際の安全性を評価する目的で実施した臨床試験ですが、一部承認外用量の投与群が含まれます。承認審査過程で評価された試験成績であるため、試験成績を紹介しております。

3. 国内第Ⅲ相長期投与試験(038試験)1)2)

目的

治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽に対するリフヌア®錠45mg及び15mg 1日2回経口投与の長期安全性及び有効性を評価する。

対象

20歳以上の日本人治療抵抗性又は原因不明の慢性咳嗽患者※1169例※2

※1 4ヵ月以上続く慢性咳嗽がある
※2 解析から除外されたGCP不遵守の6例を含まない

[定義]

治療抵抗性の慢性咳嗽:
咳嗽に関連すると考えられる原因疾患(GERD、喘息、上気道咳嗽症候群等)が臨床評価から示唆され、日本呼吸器学会(JRS)の咳嗽に関するガイドライン(2005)3)に基づき適切な診断のための検査と治療を受けているにもかかわらず咳嗽が継続する被験者
 原因不明の慢性咳嗽:
JRSのガイドラインに基づいて咳嗽に関する臨床評価を行った結果、関連すると考えられる原因疾患が不明な被験者

試験デザイン

多施設共同、無作為化、二重盲検、非対照、並行群間試験

方法

リフヌア®錠45mg群又はリフヌア®錠15mg群に1:1の比で無作為に割り付けた。
被験者にはリフヌア®錠45mg又はリフヌア®錠15mgを1日2回52週間経口投与した。

評価項目

主要評価項目:

(安全性)
有害事象、有害事象による投与中止

副次評価項目:

(有効性)
Leicester咳問診票(LCQ)(12週時及び52週時まで)
(1)合計スコアのベースラインからの変化
(2)合計スコアがベースラインから1.3ポイント以上増加した被験者の割合

安全性評価項目:副作用など

※咳嗽頻度以外は患者報告アウトカム(PRO)評価。質問票解説とレスポンダーの定義は下記参照

解析計画
(安全性)
  • 有害事象は発現した被験者数及び割合を用いて、事象ごとに要約する。
  • 味覚に関連する有害事象(味覚消失、味覚不全、味覚過敏、味覚減退、味覚障害)及び口の錯感覚/感覚鈍麻を重要な有害事象とする。
  • 主要解析対象集団:APaT
(有効性)
  • 検定法:経時データ型共分散分析モデル
    - 共変量:投与群、時点、投与群と時点の交互作用項及びベースライン
  • 主要解析対象集団:FAS

FAS(Full Analysis Set):
無作為割り付け後に1回以上治験薬の投与を受け、評価項目についてベースライン時と投与期間中の投与後に各1回以上測定したすべての被験者
APaT(All-Participants-as-Treated):
無作為割り付け後に治験薬を1回以上投与されたすべての被験者

患者背景(APaT)

リフヌア®錠45mg群
(n=85)
リフヌア®錠15mg群
(n=84)
性別
例数(%)
男性 34(40.0) 29(34.5)
女性 51(60.0) 55(65.5)
年齢(歳)
平均(標準偏差) 57.6(15.8) 58.2(14.1)
BMI(kg/m2
平均(標準偏差) 23.9(4.0) 24.3(4.4)
慢性咳嗽の期間(年)
平均(標準偏差) 8.6(9.9) 9.8(11.2)
慢性咳嗽の診断
例数(%)
治療抵抗性 73(85.9) 74(88.1)
原因不明 12(14.1) 10(11.9)
併存疾患
例数(%)
あり 85(100.0) 84(100.0)
喘息 43(50.6) 40(47.6)
アレルギー性鼻炎 32(37.6) 27(32.1)
咳喘息 27(31.8) 28(33.3)
胃食道逆流性疾患 21(24.7) 22(26.2)
前治療薬
例数(%)
あり 85(100.0) 83(98.8)
閉塞性気道疾患治療薬 83(97.6) 79(94.0)
咳嗽及び感冒治療薬 58(68.2) 57(67.9)
点鼻薬 54(63.5) 46(54.8)
全身性抗ヒスタミン薬 47(55.3) 38(45.2)
酸関連疾患治療薬 43(50.6) 42(50.0)
喫煙歴
例数(%)
あり 25(29.4) 30(35.7)
なし 60(70.6) 54(64.3)
合計LCQスコア
平均(標準偏差) 14.1(3.3) 13.8(3.6)
週間平均CSDスコア
平均(標準偏差) 3.4(2.0) 3.7(2.1)
EQ5D-5Lスコア
平均(標準偏差) 0.8(0.1) 0.8(0.1)
EQ VAS (n=85) (n=83)
平均(標準偏差) 67.5(17.1) 71.2(17.5)

EQ5D-5L:EuroQoL 5 Version Five Dimensions Questionnaire
5項目各5段階で構成されている全般的な健康状態を評価するための質問票
EQ VAS:両端に「想像できる最も良い健康状態」と「想像できる最も悪い健康状態」が記載されている視覚的アナログ尺度

6.
用法及び用量
通常、成人にはゲーファピキサントとして1回45mgを1日2回経口投与する。

(1)安全性
*[主要評価項目]

リフヌア®錠45mg群 リフヌア®錠15mg群
安全性評価例数 85 84
有害事象 発現例数(%) 82(96.5) 79(94.0)
副作用 発現例数(%) 65(76.5) 33(39.3)
投与中止に至った有害事象 発現例数(%) 17(20.0) 6( 7.1)

有害事象及び副作用一覧(いずれかの投与群で発現率5%以上)

有害事象・副作用の種類 有害事象 副作用
リフヌア®錠45mg群 リフヌア®錠15mg群 リフヌア®錠45mg群 リフヌア®錠15mg群
発現例数 発現率(%) 発現例数 発現率(%) 発現例数 発現率(%) 発現例数 発現率(%)
胃腸障害
便秘 2 2.4 6 7.1 0 0.0 1 1.2
下痢 2 2.4 7 8.3 0 0.0 1 1.2
胃食道逆流性疾患 1 1.2 6 7.1 0 0.0 0 0.0
口の錯感覚 5 5.9 1 1.2 5 5.9 1 1.2
一般・全身障害及び投与部位の状態
発熱 6 7.1 5 6.0 0 0.0 0 0.0
感染症及び寄生虫症
気管支炎 3 3.5 10 11.9 0 0.0 0 0.0
胃腸炎 6 7.1 2 2.4 0 0.0 0 0.0
上咽頭炎 33 38.8 25 29.8 0 0.0 0 0.0
咽頭炎 4 4.7 8 9.5 0 0.0 0 0.0
傷害、中毒及び処置合併症
偶発的過量投与 3 3.5 5 6.0 0 0.0 0 0.0
神経系障害
味覚消失 5 5.9 0 0.0 5 5.9 0 0.0
味覚不全 40 47.1 14 16.7 39 45.9 13 15.5
頭痛 3 3.5 9 10.7 1 1.2 1 1.2
味覚減退 14 16.5 9 10.7 14 16.5 8 9.5
味覚障害 10 11.8 6 7.1 10 11.8 6 7.1
精神障害
不眠症 5 5.9 1 1.2 0 0.0 0 0.0
呼吸器、胸郭及び縦郭障害
喘息 6 7.1 11 13.1 0 0.0 0 0.0
咳嗽 11 12.9 19 22.6 0 0.0 0 0.0

発現率(%)=【発現例数】/【安全性評価例数】×100
MedDRA基本語による集計(MedDRA ver.23.0)

投与中止に至った副作用は、リフヌア®錠45mg群では15例(味覚不全9例、味覚障害、味覚消失が各3例、味覚減退、悪心、胃炎、腹痛が各1例)、リフヌア®錠15mg群では3例(味覚減退、味覚障害、舌炎、肝機能検査値上昇が各1例)でした。
本試験において、重篤な副作用及び死亡例はいずれの群でも認められませんでした。

リフヌア®錠15mg群は、承認外の用法及び用量のため、有効性の結果からは削除しています。

(2) 12週時及び52週までのLCQ合計スコアのベースラインからの変化/LCQ 合計スコアがベースラインから1.3ポイント以上増加した被験者の割合(FAS)[副次評価項目]

リフヌア®錠45mg群のLCQ合計スコアのベースラインからの変化量の最小二乗平均(95%信頼区間)は、12週時では0.9(0.3, 1.6)、52週時では1.5(0.8, 2.1)でした。
LCQ合計スコアがベースラインから1.3ポイント以上増加した被験者の割合は、12週時では40.7%、52週時では46.8%でした。

LCQ合計スコアのベースラインからの変化量の推移
LCQ合計スコアがベースラインから1.3ポイント以上増加した被験者の割合の推移

臨床試験で用いたPRO評価及びレスポンダーの定義

24時間の咳嗽頻度(1時間あたりの回数)がベースラインから30%以上減少した被験者の割合

レスポンダーの定義として用いた臨床的に重要な改善の閾値(30%以上減少)は、海外第Ⅱ相試験(012試験)の結果に基づく分布法及びアンカー法を組み合わせた解析4)により、24時間の咳嗽頻度がベースラインから30%以上減少した場合にPGIC(全般的な変化への影響を評価)の改善が予測されることから設定した。

CSD合計スコアの週平均がベースラインから1.3ポイント以上又は
2.7ポイント以上減少した被験者の割合

咳重症度日誌(CSD)は咳嗽頻度(3項目)、咳嗽の強度(2項目)及び咳嗽による支障(2項目)を0~10の11段階で評価する質問票で、スコアが高いほど重症であることを示す。
本試験におけるレスポンダーの定義に用いた1.3及び2.7ポイント以上の減少は、海外第Ⅱ相試験(012試験)のPGICの解析結果5)に基づき設定した。

咳重症度VASがベースラインから30mm以上減少した被験者の割合

咳重症度VASは、0(咳をしない)、100(極めてひどい咳)の範囲に対応した100mmのVASを用いて、過去24時間の咳重症度を評価する。
レスポンダーの定義に用いた30mm以上の減少は、海外第Ⅱ相試験(012試験)のPGICの解析結果6)に基づき設定した。

LCQ合計スコアがベースラインから1.3ポイント以上増加した被験者の割合

LCQは3つの個別の領域(身体的、精神的機能、社会的)に分類される19項目の質問で構成されているQOL質問票である。
各質問は、1~7ポイントの7段階のリッカート尺度で、評価前2週間の症状及び症状がQOLに及ぼす影響を評価する。3つの個別領域における質問を平均したスコアを合計した3~21ポイントをLCQ合計スコアとして評価する。スコアが高いほどQOLが良好であることを示す。
レスポンダーの定義に用いた1.3ポイント以上の増加はLCQに関する公表データ7)及び海外第Ⅱ相試験(012試験)データ8)に基づき、臨床的に重要なスコアの改善と考えられたことから設定した。

PGICについて
「非常に大幅に改善された」から「非常に大幅に悪化した」まで7段階のリッカート尺度を用いて、治験開始時と比較した状態の変化に対する影響を評価する質問票であり、異なる評価項目のレスポンダーの定義として臨床的に重要な改善の閾値を推定する解析にも使用される。海外第Ⅱ相試験(012試験)のPGICの解析には、PGICの改善を示す3つのカテゴリー(非常に大幅に改善された、非常に改善された、最小限に改善された)を用いた。


  1. 1)承認時評価資料:国内第Ⅲ相長期投与試験(038試験)
  2. 2)Niimi A, Sagara H, et al. Allergol Int. 2022; 71(4): 498-504.
    【利益相反】本試験はMSD株式会社の支援により実施された。
  3. 3)日本呼吸器学会, 咳嗽に関するガイドライン. 杏林舍, 2005.
  4. 4)Schelfout J, et al. Lung. 2022; 200(6): 717-24.
    【利益相反】本研究はMSD社の支援により実施され、著者のうち4名が同社の社員である。
  5. 5)Nguyen AM, et al. Ther Adv Respir Dis. 2020; 14: 1-15.
    【利益相反】本研究はMSD社の支援により実施され、著者のうち1名が同社の社員である。
  6. 6)Nguyen AM, et al. Ther Adv Respir Dis. 2021; 15: 1-13.
    【利益相反】本研究はMSD社の支援により実施され、著者のうち4名が同社の社員である。
  7. 7)Raj AA, et al. Handb Exp Pharmacol. 2009;(187): 311-20.15)
  8. 8)Nguyen AM, et al. Ther Adv Respir Dis. 2022; 16: 1-13.
    【利益相反】本研究はMSD社の支援により実施され、著者のうち4名が同社の社員である。

禁忌を含む注意事項等情報につきましては電子添文をご参照ください。