ライブラリ -専門医の症例から学ぶ泌尿器科疾患 女性編-
紹介内容には、解説者の知識、経験、方針に基づく私見が含まれている場合があります。薬剤の使用にあたっては、各薬剤の最新の電子添文をご参照ください。
すべての記事
尿失禁をきたす疾患
長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科 松尾 朋博 先生
尿失禁は女性における下部尿路症状の中でも代表的なものです。特に、①咳や肥満などによる腹圧上昇から誘発される腹圧性尿失禁、②過活動膀胱患者に見られる切迫性尿失禁は実臨床の場で多く経験します。
しかしながら今回は、薬剤や骨盤底筋訓練では軽快しない少し特殊ではあるものの、泌尿器科医として必ず適切に対応しなければいけない症例を紹介します。
(2024.5掲載 監修:今村 亮一 先生)
排尿困難をきたす疾患
長崎労災病院 泌尿器科 酒井 英樹 先生
中高年男性にみられる前立腺肥大症では、前立腺腫大にともなう膀胱出口部閉塞(bladderoutlet obstruction: BOO)が排尿困難を引き起こす。一方、女性では下部尿路の解剖学的違いから、排尿困難の原因としては骨盤内手術や糖尿病などに伴う神経障害が多く、BOOは比較的少ない。今回、女性におけるBOOの原因となる骨盤臓器脱の症例を提示する。
(2024.3掲載 監修:今村 亮一 先生)
肉眼的血尿をきたす疾患
長崎医療センター 泌尿器科 錦戸 雅春 先生
肉眼的血尿は女性の場合、男性と比較して原因疾患の頻度が違い、特殊な疾患も考えていく必要がある。もちろん中年以降の女性の場合は悪性腫瘍を最も鑑別しなければならない。今回諸検査で原因が特定できず、腎盂尿管鏡で診断治療に至った症例を提示する。
(2024.1掲載 監修:今村 亮一 先生)
疝痛発作をきたす疾患
佐世保市総合医療センター 泌尿器科 今里 祐之 先生
背部の疝痛発作をきたす代表的な疾患に尿路結石症があります。尿管に下降した欠席が尿路の通過障害の原因となり、腎盂内圧が上昇すると痛みが発生します。尿路結石症は男性に多く、泌尿器科外来でみられる最も頻度の高い疾患のひとつです。今回は遭遇する頻度は高くないですが、女性に多い疾患で背部痛がきっかけとなって診断に至った症例について考えてみたいと思います。
(2023.11掲載 監修:今村 亮一 先生)
膿尿をきたす疾患
日本赤十字社長崎原爆病院 泌尿器科 鶴﨑 俊文 先生
女性は男性に比べ、高頻度に膀胱炎を起こし、特に高齢女性では再発性、難治性のことも多い。一方若年女性ではほとんどが急性単純性膀胱炎であり、経口抗菌薬投与で容易に治癒することが多い。しかし今回の症例のように難治性の場合、薬剤性膀胱炎などの特殊な病態も考慮する必要がある。
(2023.9掲載 監修:今村 亮一 先生)
監修のコメント
本邦では高齢化が進む中、排尿障害、尿路性器悪性腫瘍、慢性腎疾患などの泌尿器科疾患の患者さんのさらなる増加が予想されます。また泌尿器科疾患は、性別により下部尿路や骨盤底の構造と機能が同一でないことから、それぞれ特徴的な病態・症候を呈することが少なくありません。
診療技能のスキルアップには、実際に数多くの症例を経験することが重要ですが、自身で経験できる症例には限りがあるため、他の先生が経験された症例から学ぶことは重要です。
本コンテンツでは、弘前大学関連病院の先生方にご協力いただき、泌尿器科での診療で頻繁に遭遇する各種症状・徴候を伴う女性症例を提示いただき、鑑別診断をおこなうためのポイントなどをご解説いただきます。診断する上でのポイントをよりイメージいただけるよう提示いただく症例については、鑑別画像・検査所見などを示し、最後に担当した先生の実践的なコメントを掲載いただいております。
本コンテンツの内容が若手の泌尿器科専門医ならびに泌尿器科非専門医の先生方の日常診療の参考となり、ひいては患者さんの利益につながれば幸いです。
泌尿器科学講座 教授