医師として「患者さんの体重管理に頭を悩ませている」という読者の方も多いことでしょう。「体重を減らす」は英語ではlose weightですので、「体重を減らしたほうが良いですよ」と言いたい場合には“You should consider losing some weight.”のように表現することができます。ただ主語を「体重を減らすこと」に変えることでより客観的なニュアンスが強まりますので、“Losing some weight could help improve your overall health.”のような表現のほうがお勧めです。
英語にはこのweightを使った慣用表現が数多くありますが、最もよく使われるのがpull your weightというものです。これは「自分の体重分を引っ張る=自分のやるべき仕事をこなす」という意味の慣用表現で、患者さんにも“To improve your health, you’ll need to pull your weight by sticking to the diet and exercise plan we’ve discussed.”のように使うことができます。
「体重を計る」は動詞のweighを使ってweigh oneselfと表現できます。患者さんの体重を尋ねる場合には「最後に体重を計ったのはいつですか?」のように質問をすれば自然に体重に関しても言及してもらえるので、“When was the last time you weighed yourself?”という表現を覚えておきましょう。そしてこの質問は「体重計」のscaleを使って“When was the last time you weighed yourself on a scale?”と表現することもできます。たいていの場合、この質問で患者さんは具体的な体重を言及してくれますが、そうでない場合には“How much did you weigh at that time?”のように尋ねましょう。
日本を含め世界のほとんどの国や地域はkilogram(kg)を使って体重を表記しますが、米国やカナダではpound(日本語の「ポンド」ではなく「パゥンド」のように発音)を使って体重を表記します。このpoundとkilogramには1 pound(lb)= 0.453592 kilograms(kg)という関係があるのですが、「ポンドの半分の9割(45%)がキログラム」と覚えておくと便利です。ですから160 poundsと言われたら「160ポンドの半分の80キログラムの9割=72キログラム程度かな?」と認識すれば良いのです。実際に計算すると160 poundsは約72.6 kilogramsですから、この法則で考えてもかなり近い値を推測できます。とても便利な覚え方ですので、次にpoundの表記に出会ったらぜひ使ってみてください。
そしてこのpoundにはlbという略語が使われますが、皆さんはなぜこれがpoundの略語になるのかご存じでしょうか?
このlbは「天秤」を意味するlibraというラテン語から派生した表現で、そこから重さのpoundにも転用されたと考えられています。また重さのpoundだけでなく、英国通貨にもこの表現が使われており、英国通貨のpoundにはこのlibraの頭文字を使った?が使われているのです。そして重さのlbも通貨の?もどちらも読み方はpound(s)となるのです。
ただ英語圏では重さのlbは単数形を使って160 lbと表記されたり、複数形を使って160 lbsと表記されたりする場合がありますが、どちらが正しいのでしょうか?
答えは単数形の160 lbです。gramとkilogramにもそれぞれgとkgという略語が使われますが、100 gramsや72 kilogramsを100 gsや72 kgsとは表記せず、100 gや72 kgと単数形で表記しています。確かに160 lbの単位の読み方は160 poundsと複数形になるのですが、略語の正しい表記は160 lbのように単数形となります。ただ英語母国語話者でも160 lbsのような誤った表記を使う方が多いのも事実です。これを読んだ皆さんは惑わされることなく正しい表記を使うようにしてくださいね。
さて体重に関する英語表現で注意が必要なのが「肥満」の英訳です。
体重の区分としてはbody mass index(BMI)が世界的にも使われていますが、その区分の方法は国や地域によって異なります。日本肥満学会ではBMI 25以上を「肥満」obesityと定義していますが、英語圏ではWHOの区分を使うので、obesityという表現はBMI 30以上の区分にしか使われません。ですから日本の区分にしたがってBMIが25-30の区分に当たる英語圏の方にobesityやobeseという英語表現を使うと、「自分はそこまで太っていない!」と反感を買ってしまうのです。
WHOの定義ではBMI 25-30の区分をpre-obesityと表現していますが、英語圏ではこれをoverweightと表現します。ですから日本に多いBMI 25-30の区分の「肥満」に関してはobesityではなくoverweightという英訳を使うのが適切と言えます。
このoverweightは名詞だけでなく形容詞としても使われます。ですから患者さんのBMIが28の場合に「肥満気味ですね」と表現したい場合には“You are little bit overweight.”のように表現することができます。ただこのように患者さんを主語として表現するのではなく、BMIを主語にして“Your BMI is 28. This falls into the overweight category.”のように表現するほうが良い印象を与えます。また肥満に関する形容詞としてfatやchubbyなどもありますが、これらは医学的なものではなく、医師が使うものとしてはふさわしいものではありませんので注意してくださいね。
そしてBMI 30以上はWHOの区分でもobesityとなります。今では使用は推奨されていませんが、かつてはBMI 40以上のobesityのことをmorbid obesityと呼んでいました。こういったobesityに対する治療のことをbariatric care「肥満治療」と呼び、その中の外科治療のことをbariatric surgeryと呼びます。
国や地域を問わず、BMI 18.5未満の場合にはunderweight「低体重」と区分されます。「やせている」を意味する形容詞としてはslimやslenderなどがあります。slimには「脂肪が少なくて体幹が細い」というイメージが、そしてslenderには「脂肪が少なくて体幹も細く手足も長い」というイメージがあります。また「健康的にやせている」を意味する形容詞としてleanやfitというものもあり、leanには「脂肪が少なくて引き締まっている」というイメージが、そしてfitには「脂肪が少なく心肺機能も高い」というイメージがあります。これらは皆ポジティブな意味で使われる形容詞ですが、thinやskinnyという形容詞には「ガリガリ」のようなイメージがあり、どちらもネガティブな印象を与える形容詞です。ただ欧米ではポジティブなものであっても、体型に関して言及することはタブー視されています。特に他人の体型について否定的な評価をする行為はbody shamingと呼ばれており、心理的に様々な負の効果をもたらすことが知られています。「意図しない差別行為」であるmicroaggressionにもつながりますので、たとえポジティブなものであっても、体型に関して言及することは原則控えるようにしてください。
またBMI 17未満は「るいそう」と区分されますが、これを英語ではemaciation(「エメィシエィション」のように発音)と表現します。このemaciationの動詞のemaciateには「やつれさせる」というイメージが、そして形容詞のemaciatedには「やつれている」というイメージがありますので、一緒に覚えておきましょう。
そしてBMIの区分とは別にcachexiaとsarcopeniaという表現もあります。cachexia(「カケクシィア」のように発音)は悪性腫瘍などの慢性疾患によって「病的に痩せた状態」を意味する用語であり、日本では古くから「悪液質」という訳語があてられています。これに対してsarcopenia(「サァコピィニィア」のように発音)は「加齢による筋肉量の減少および筋力の低下」のことで、日本語ではカタカナを使って「サルコペニア」と呼ばれています。
臨床的には体重の増減、つまり「体重増加」weight gainや「体重減少」weight lossも問題となります。その有無を尋ねるには“Have you noticed any changes in your weight?”という質問が有効です。もちろん臨床的に問題となるのはunintentional weight gain/lossですから、“Was this weight change intentional or did it happen without you trying?”のような質問を重ねると良いでしょう。そして最初から“Have you noticed any unintentional weight gain or loss recently?”のようにintentional weight gain/lossを直接尋ねる表現も有効です。必要に合わせてぜひ使い分けてみてくださいね。
英語にはこのweightを使った慣用表現が数多くありますが、最もよく使われるのがpull your weightというものです。これは「自分の体重分を引っ張る=自分のやるべき仕事をこなす」という意味の慣用表現で、患者さんにも“To improve your health, you’ll need to pull your weight by sticking to the diet and exercise plan we’ve discussed.”のように使うことができます。
「体重を計る」は動詞のweighを使ってweigh oneselfと表現できます。患者さんの体重を尋ねる場合には「最後に体重を計ったのはいつですか?」のように質問をすれば自然に体重に関しても言及してもらえるので、“When was the last time you weighed yourself?”という表現を覚えておきましょう。そしてこの質問は「体重計」のscaleを使って“When was the last time you weighed yourself on a scale?”と表現することもできます。たいていの場合、この質問で患者さんは具体的な体重を言及してくれますが、そうでない場合には“How much did you weigh at that time?”のように尋ねましょう。
日本を含め世界のほとんどの国や地域はkilogram(kg)を使って体重を表記しますが、米国やカナダではpound(日本語の「ポンド」ではなく「パゥンド」のように発音)を使って体重を表記します。このpoundとkilogramには1 pound(lb)= 0.453592 kilograms(kg)という関係があるのですが、「ポンドの半分の9割(45%)がキログラム」と覚えておくと便利です。ですから160 poundsと言われたら「160ポンドの半分の80キログラムの9割=72キログラム程度かな?」と認識すれば良いのです。実際に計算すると160 poundsは約72.6 kilogramsですから、この法則で考えてもかなり近い値を推測できます。とても便利な覚え方ですので、次にpoundの表記に出会ったらぜひ使ってみてください。
そしてこのpoundにはlbという略語が使われますが、皆さんはなぜこれがpoundの略語になるのかご存じでしょうか?
このlbは「天秤」を意味するlibraというラテン語から派生した表現で、そこから重さのpoundにも転用されたと考えられています。また重さのpoundだけでなく、英国通貨にもこの表現が使われており、英国通貨のpoundにはこのlibraの頭文字を使った?が使われているのです。そして重さのlbも通貨の?もどちらも読み方はpound(s)となるのです。
ただ英語圏では重さのlbは単数形を使って160 lbと表記されたり、複数形を使って160 lbsと表記されたりする場合がありますが、どちらが正しいのでしょうか?
答えは単数形の160 lbです。gramとkilogramにもそれぞれgとkgという略語が使われますが、100 gramsや72 kilogramsを100 gsや72 kgsとは表記せず、100 gや72 kgと単数形で表記しています。確かに160 lbの単位の読み方は160 poundsと複数形になるのですが、略語の正しい表記は160 lbのように単数形となります。ただ英語母国語話者でも160 lbsのような誤った表記を使う方が多いのも事実です。これを読んだ皆さんは惑わされることなく正しい表記を使うようにしてくださいね。
さて体重に関する英語表現で注意が必要なのが「肥満」の英訳です。
体重の区分としてはbody mass index(BMI)が世界的にも使われていますが、その区分の方法は国や地域によって異なります。日本肥満学会ではBMI 25以上を「肥満」obesityと定義していますが、英語圏ではWHOの区分を使うので、obesityという表現はBMI 30以上の区分にしか使われません。ですから日本の区分にしたがってBMIが25-30の区分に当たる英語圏の方にobesityやobeseという英語表現を使うと、「自分はそこまで太っていない!」と反感を買ってしまうのです。
WHOの定義ではBMI 25-30の区分をpre-obesityと表現していますが、英語圏ではこれをoverweightと表現します。ですから日本に多いBMI 25-30の区分の「肥満」に関してはobesityではなくoverweightという英訳を使うのが適切と言えます。
このoverweightは名詞だけでなく形容詞としても使われます。ですから患者さんのBMIが28の場合に「肥満気味ですね」と表現したい場合には“You are little bit overweight.”のように表現することができます。ただこのように患者さんを主語として表現するのではなく、BMIを主語にして“Your BMI is 28. This falls into the overweight category.”のように表現するほうが良い印象を与えます。また肥満に関する形容詞としてfatやchubbyなどもありますが、これらは医学的なものではなく、医師が使うものとしてはふさわしいものではありませんので注意してくださいね。
そしてBMI 30以上はWHOの区分でもobesityとなります。今では使用は推奨されていませんが、かつてはBMI 40以上のobesityのことをmorbid obesityと呼んでいました。こういったobesityに対する治療のことをbariatric care「肥満治療」と呼び、その中の外科治療のことをbariatric surgeryと呼びます。
国や地域を問わず、BMI 18.5未満の場合にはunderweight「低体重」と区分されます。「やせている」を意味する形容詞としてはslimやslenderなどがあります。slimには「脂肪が少なくて体幹が細い」というイメージが、そしてslenderには「脂肪が少なくて体幹も細く手足も長い」というイメージがあります。また「健康的にやせている」を意味する形容詞としてleanやfitというものもあり、leanには「脂肪が少なくて引き締まっている」というイメージが、そしてfitには「脂肪が少なく心肺機能も高い」というイメージがあります。これらは皆ポジティブな意味で使われる形容詞ですが、thinやskinnyという形容詞には「ガリガリ」のようなイメージがあり、どちらもネガティブな印象を与える形容詞です。ただ欧米ではポジティブなものであっても、体型に関して言及することはタブー視されています。特に他人の体型について否定的な評価をする行為はbody shamingと呼ばれており、心理的に様々な負の効果をもたらすことが知られています。「意図しない差別行為」であるmicroaggressionにもつながりますので、たとえポジティブなものであっても、体型に関して言及することは原則控えるようにしてください。
またBMI 17未満は「るいそう」と区分されますが、これを英語ではemaciation(「エメィシエィション」のように発音)と表現します。このemaciationの動詞のemaciateには「やつれさせる」というイメージが、そして形容詞のemaciatedには「やつれている」というイメージがありますので、一緒に覚えておきましょう。
そしてBMIの区分とは別にcachexiaとsarcopeniaという表現もあります。cachexia(「カケクシィア」のように発音)は悪性腫瘍などの慢性疾患によって「病的に痩せた状態」を意味する用語であり、日本では古くから「悪液質」という訳語があてられています。これに対してsarcopenia(「サァコピィニィア」のように発音)は「加齢による筋肉量の減少および筋力の低下」のことで、日本語ではカタカナを使って「サルコペニア」と呼ばれています。
臨床的には体重の増減、つまり「体重増加」weight gainや「体重減少」weight lossも問題となります。その有無を尋ねるには“Have you noticed any changes in your weight?”という質問が有効です。もちろん臨床的に問題となるのはunintentional weight gain/lossですから、“Was this weight change intentional or did it happen without you trying?”のような質問を重ねると良いでしょう。そして最初から“Have you noticed any unintentional weight gain or loss recently?”のようにintentional weight gain/lossを直接尋ねる表現も有効です。必要に合わせてぜひ使い分けてみてくださいね。