ドクターサロン

齊藤

アレルギー性結膜炎とは、どういったものでしょうか。

高村

Ⅰ型アレルギー反応で起こる結膜炎です。アレルギー性結膜疾患は種類が幾つかありますが、いずれもⅠ型アレルギー反応を主体とした結膜の炎症性疾患です。抗原によって惹起される自覚症状、他覚所見を伴うものと定義されています。臨床像の違いで幾つかのタイプがありますが、目のかゆみ、充血が共通の主症状です。結膜炎が主体の場合、季節性、通年性といったものがありますし、結膜の増殖性変化、つまりまぶたの裏の粘膜がでこぼこになったり、角膜(黒目)のほうに傷ができたり、潰瘍ができたりという経過をとる重症型には、春季カタルやアトピー性角結膜炎などがあります。

齊藤

季節性アレルギー性結膜炎は花粉症のようなものでしょうが、これは増えてきていますか。

高村

最近、国民病といわれているように、花粉症自体が増えています。眼科での疫学調査はあまり数多く行われていませんが、1993年に厚生労働省が行ったフィールド調査では、人口の15~20%ぐらいといわれていました。しかし、2017年に日本眼科アレルギー研究会が眼科医会の会員とその家族に対するウェブアンケートを3,000人ぐらいで実施しているものでは、有病率が50%弱となっていますから、増えてきているといっていいと思います。

齊藤

まず季節性のアレルギー性結膜炎は、どういった症状、鑑別疾患になりますか。

高村

スギ花粉症といえばよくおわかりになるかと思いますが、結膜炎です。結膜炎は、スギ花粉の場合だとスギの飛散時期を中心として、目のかゆみのある結膜炎が特徴です。

結膜炎は目が赤くなったり、目やにが出たりします。目やには白っぽい糸を引くような目やにで、結膜炎の鑑別には、これがけっこう、役に立ちます。この時期にかゆいといったら、まず眼科医も、眼科医以外の医師も花粉症を疑うと思いますが、このとき鑑別しなければいけないほかの結膜炎もあります。

一番間違ってはいけないのはアデノウイルスによる、感染力がとても強い結膜炎です。この場合は、結膜の所属リンパ節の耳の前のリンパ節が有痛性に腫れます。ですから目が赤くて、かゆいといった症状があっても、耳の前を触診していただき、リンパ節が腫れていたら、結膜炎の原因はアレルギーではないかもしれないと思い、治療方針を切り替える必要が出てくると思います。

細菌性結膜炎の場合は、目やにが白っぽいというよりも白血球を主体としているので、膿のような黄色っぽい目やにが出ます。この場合、治療薬は抗菌点眼薬になります。

齊藤

これは眼科医にお願いするのがいいでしょうね。

高村

耳の前のリンパ節が怪しい、と迷った場合は、ぜひ眼科に紹介ください。

齊藤

診断はどうなりますか。

高村

アレルギー性結膜炎を診た場合、まず先ほどいった目がかゆい、充血がある、人によっては涙目やゴロゴロするなどの症状があることです。眼科以外の医師が結膜の所見を細かく見ることは無理だと思いますが、症状は一つのヒントになります。

それから、アレルギーが体で起きていることを見るには、内科医も実施すると思いますが、皮膚テストや血液を採って原因を調べることです。

1つ注意点はアレルギー体質の人がたまたまアレルギー以外の結膜炎ということもあるので、結膜でアレルギー反応が起きているかどうかを証明する。これが確定診断になるのです。

好酸球は普通、結膜にはいませんので、好酸球を眼脂の中から証明できれば確定診断でしたが、さすがに今では、外来でスメアを採り、鏡検してということを行っている医師は少ないですし、軽い症状の場合はなかなか陽性に出ません。

最近は、涙液中の総IgE検査で診断しています。抗原特異的ではなく、総IgEを簡単に測るキットです。シルマーテストで涙液を調べるときのように、細いろ紙を目のところにぶら下げると3分ぐらいで涙が採れるので、それを展開液につけて2本陽性のラインが出れば臨床的確定診断となり、アレルギーだとわかります。

これは眼科医だけではなく、他の科の医師でもキットに入っている説明を読めばできる検査です。

齊藤

今はどういう治療が一番よいのでしょうか。

高村

抗アレルギー点眼薬が第一選択です。効果はもちろんですが、安全性も高いです。種類にはメディエーター遊離抑制薬のものと抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)の2種類があります。

内服薬では、抗ヒスタミン薬、それもinverse agonist作用があるものが主流です。点眼薬も最近は抗ヒスタミン作用のあるもののほうが、速効性があるということで、気に入られているように思います。安全だということも使いやすい点です。

ステロイドは、点眼薬の場合、眼圧が上がることがありますし、特にお子さんでは起こりやすいので、第一選択としては、抗アレルギー点眼薬を選んでいただきたいと思います。

齊藤

患者さんで「以前、ステロイドの点眼で効いたので、それをまたください」という人がいますが、ステロイド点眼薬は眼圧への問題がありますから、プロが使うほうがいいですね。

高村

そうですね。眼圧が測定できる眼科以外の医師はあまりいらっしゃらないと思うので、ステロイド点眼薬が必要だと思ったら眼科に任せることが大切です。

もう1つ大事なことは、患者さんの点眼の使い方を、こちらからきちんと指示してあげることです。また、時々確認しないと、きちんとつけていない。そして、その揚げ句、効かないといってくることが多いです。

ですから、例えば1日2回のものは朝夕つけるとか、そういった使い方を守っていただくこと。それから、時々「きちんとつけていますか」と聞くことが大事です。かゆみ止めだと思い、かゆいときだけつける方がけっこう多いです。そうすると、つけていない時期、花粉などが飛んでくると、また症状がだんだん出てきて、慌ててつけても、そのときには効き目があまり感じられないので、ステロイド点眼薬が要求されてしまうことがあります。

齊藤

花粉飛散初期から使ったほうがよいのでしょうか。

高村

タイミングとしては、東京だと2月半ばごろに花粉飛散が始まります。しかし、実際には年末から、1月でも飛んでいるので、少しでも症状を感じたら、また毎年という方は1月末から2月初旬からはつけ始めることを私は勧めています。

そして何より続けることです。回数と用法を守り、症状が少し軽くなっても、しばらく続けていくことが大事です。

齊藤

それから春季カタルについてお話しくださいますか。

高村

春季カタルは症状が花粉症よりだいぶ重いです。かゆみも強いですし、そのほかに黒目(角膜)にも傷ができると、角膜は知覚が敏感なので痛いです。潰瘍ができると、痛くて目が開けられない。10歳ぐらいの男の子に多く発症します。ですから、学校にも行けない子が出てくるので、これはかなり重症です。

齊藤

アトピーとの関連があるのですか。

高村

そうですね。アトピー体質の方に多いです。子どものころから続いたり、大人でもアトピー性皮膚炎、特に顔のアトピーがひどいと春季カタルと同じような病態で、症状も同じように重症なものになっていきます。

ですから、大人の場合も同じものを使って治療しています。重症であることは確かですが、今ではいい治療薬が出てきたので、それを上手に使っていくことが大事だと思います。

齊藤

こういった患者さんは眼科医にお願いするということですが、どういった治療があるのでしょうか。

高村

点眼治療になりますが、それこそ重症な患者さんには、今まではステロイド点眼薬、それも強力な高濃度のものをたくさん使うことが必要でした。ただ、お子さんの場合はステロイド点眼薬の副作用で眼圧が上がる率が高いので、とても悩ましかったです。

今は免疫抑制点眼薬(カルシニューリン阻害薬の点眼製剤化されたもの)があり、これがよく効きます。ただ、これは使い方が難しいので、アトピーのあるような方で、目をとても痛そうにしている方がいた場合は、ぜひ眼科に紹介していただき、この薬を上手に使っていくことがいいと思います。

齊藤

内科医にも「ついでに花粉症の点眼薬をください」といわれて出すことが多いですが、注意点は何でしょうか。

高村

先ほどお話しした抗アレルギー点眼薬はぜひ処方してください。処方しなかった場合、結局、市販薬を続けていたということもあります。ただ、効かないといったときに、もう一回、きちんと1日何回、どのような時に使っているかの確認をしてほしいです。

それから特に重症な、特にお子さん、アトピー性皮膚炎の顔の状態が悪いような方の場合には、先ほどいったような、重症なタイプに効く薬があります。ぜひ眼科に紹介していただき、新しい治療に向いているかどうかということを診てもらってください。

齊藤

ありがとうございました。