池田
カプセル内視鏡は新しいようで古いような感じがしますが、歴史的にはいつごろから使われているものでしょうか。
澁谷
もともとは1980年代にカメラ付きミサイルの開発者がつくり始め、2000年に論文掲載され、2001年からアメリカで使われるようになりました。日本では2007年ぐらいから使用可能になっています。
池田
小さなカプセルにカメラが付いているイメージですが、実際はカメラだけではなく、そこに何か画像記憶素子のようなものが付いているのでしょうか。
澁谷
カプセル内視鏡のカプセルは写真を撮るだけです。体に心電図のようなセンサーを付け、飲み込んだカプセルから体の外にある受信機に写真を送っていくので、カプセルの中には写真は残らず、体の外の機械に自動的に写真を集めるようになっています。
池田
では、カプセルを回収する必要はないということですか。
澁谷
カプセル自体は使い捨てなので、お尻から出てきたものは、そのまま廃棄になります。
池田
実際のカプセルの大きさはどのくらいでしょう。
澁谷
長さが26㎜、直径が11㎜。イメージとしては小指の先ぐらいの大きさでしょうか。
池田
では、比較的簡単に飲み込め、スムーズに腸の中に行くのですね。
澁谷
若干大きいので、高齢者では飲めないこともありますが、子どもでも飲んだりしています。
池田
カプセルを飲んで、腸に入ったら、画像の撮影頻度はどのくらいでしょうか。
澁谷
カプセルの動きにより違いますが、1秒間に2~6枚ぐらい、自動的に写真を撮っていきます。ご自身のおなかの動きにしたがって中を進んで写真を撮るので、ものすごい枚数です。
池田
1秒間に6枚ですか。それだけの枚数を撮っていくと、すべてを見ていられませんよね。この解像システム、診断システムはどうなっているのでしょうか。
澁谷
大量に撮った写真の中で、同じような写真は機械がまとめて削除してくれます。あとはそれをパラパラ漫画のように流し、一枚一枚を動画のように読影する感じです。
池田
私は小腸の内側の構造や所見についてはわかりませんが、すべてを見るのは難しいですよね。ある程度、機械が選別してくれるのでしょうか。
澁谷
バッテリーが8時間強もつので、その間に小腸を全部通過できれば、全部の写真は撮れます。
池田
8時間というと枚数はすごいですよね。
澁谷
はい。膨大な枚数です。それをある程度圧縮して、動画のように動かして見るので、読影は30分強から2時間ぐらい。昔は圧縮がかなり少なかったので時間がかかりましたが、今は読影ソフト自体が良くなってきているので、見る側は短時間で済むようになってきています。
池田
30分ぐらいだったら、何とかなる感じですね。
画像の精密さは最近になり、良くなっているのでしょうか。
澁谷
小腸のカプセルも3世代ぐらいレベルアップしてきているので、かなり小さな絨毛までしっかり見えるように、クリアな画像になってきています。
池田
一方、大きなものは見えるのでしょうか。
澁谷
カプセル内視鏡は小さなものを見るのは得意ですが、大きな病変はかえってわかりにくかったりします。どうしても近接してものを見るので、大きなものは、腸が外から押されているだけなのか、病変なのか、わかりにくいこともあります。
池田
発赤や出血点もクリアにわかるのでしょうか。
澁谷
特に血が出ていたりすると、のろしのようにポワンと血が上がっていったりすることもあります。出血している、ここは潰瘍になっているなどそういう感じで診断していきます。
池田
もう一つ面白いと思ったのは、蠕動により腸の通過スピードの速いところ、遅いところがありますが、そのだいたいの場所は画像や通過時間で推測できるのでしょうか。
澁谷
おなかにセンサーを8カ所付け、そのセンサーの反応で、今、だいたいおなかのどの辺にいるという、ロケーションが出るようになっています。
池田
センサーをたくさん貼ってあるので、今どの辺を通過中で、ここではこういう画像が撮れているという感じですね。
澁谷
おおまかにですが。
池田
それは便利ですね。
カメラ自体に画像の記憶素子が入っているものもあるのでしょうか。
澁谷
カプセル自体に写真が残っていくカプセルもあります。
池田
外側の素子で記録していくものは、値段はどのくらいでしょうか。
澁谷
カプセル自体が使い捨てで、3割負担の方で、2万8,000円ぐらいです。少し高額ですが、できない検査ではないかなというところです。
池田
カメラ付きミサイルから発達したもので、外側からセンサーで画像を撮っていくのは、なかなかいいシステムだと思いますが、カプセル内視鏡の適応症例はどういう方でしょうか。
澁谷
小腸の病気が疑われる原因不明の消化管出血、お尻から血が出たけれども胃カメラや大腸内視鏡をやっても原因がわからない人や、慢性の下痢で原因がわからない人、腹痛などがあり小腸に病気があるのではないかという患者さんが適応になります。
池田
ターゲットは大腸ではなく小腸なのでしょうか。
澁谷
大腸用のカプセル内視鏡もありますが、小腸用のカプセルと大腸用のカプセルは別物になります。今お話ししたのは、主に小腸用のカプセルです。
池田
ちなみに、大腸用のカプセルはどういうものですか。
澁谷
大腸用のカプセルも同じようなかたちで、両側にカメラが付いており少し大きいです。これは飲み込んで大腸まで行き、肛門まで見ていかないといけないので、普通の大腸内視鏡のときのように下剤を飲み、おなかを空っぽにして、カプセルを飲んだ後に、カプセルを大腸内で進ませるためにもさらに下剤を飲んでもらい、カプセルを押し出していくような感じです。
池田
大腸カプセル内視鏡の適応はどういう方ですか。
澁谷
癒着等で普通の大腸内視鏡ではカメラが奥まで入りにくいことが想定されるような患者さんです。
池田
大腸の手術などをされるとかなり癒着しますが、そういう方は無理やり内視鏡で行うよりは安全ということでしょうか。
小腸の話に戻りますが、カプセル内視鏡で、ここに何か病変があるとわかったときに、追加の検査はあるのでしょうか。
澁谷
カプセル内視鏡で何か病気が疑われた場合はバルーン内視鏡という、普通の内視鏡より少し長く、さらにそれに風船が付いた特殊な内視鏡があります。それで口、もしくはお尻から入っていき、小腸の奥のほうまで進んでいくかたちです。
それにより出血があれば血を止めたり、腫瘍が疑われれば細胞を採ったりします。
池田
大腸側と胃の側から、かなり中のほうまで入っていけるのでしょうか。
澁谷
口からとお尻から検査を行い、全部の小腸を見ます。小腸の長さはだいたい4~6mぐらいといわれています。
池田
では、バルーン付きの細いファイバーは、2mぐらいは行ける感じでしょうか。
澁谷
小腸を手前にたぐりながら、腸を短く引っ張り寄せながら進んでいくというかたちで、少し特殊な感じです。
池田
イメージとしては、風船を膨らませておいて引っ張り、シュッと伸ばして、そういうやり方なのですね。上と下から2mと2mで4mいけるのですね。
その細いファイバーはX線透視下で行うのでしょうか。それとも、その先はファイバーで見えるのでしょうか。
澁谷
内視鏡ですから生の画像で見えますし、それに加えて、レントゲンで見ながら腸の曲がり方を確認し行っていくような感じです。
池田
それはたいへんですね。カプセル内視鏡で所見がなければ、なかなかできませんね。
澁谷
カプセル内視鏡がスクリーニング検査で、バルーン内視鏡が精密検査というイメージでしょうか。
池田
それで患者さんの苦痛も減るのですね。
澁谷
そうですね。状況により、先にカプセル内視鏡をやってからバルーン内視鏡をやるとか、その辺は検討しながらというかたちです。
池田
どうもありがとうございました。