ドクターサロン

 池田 金属アレルギーと野菜類の関係についての質問です。まず、パッチテストはおそらく皮膚科医しかやらないと思いますが、試薬ややり方が陽性や偽陽性などの結果に関係することはあるのでしょうか。
 中田 パッチテストは、10年ぐらい前までは貼って2日後と3日後の判定で終わっていました。ただ最近は、貼って7日後ぐらいまで見ないと正確な判定ができないということになっていますので、きちんと7日後まで判定されたかということです。特に日本で使われているマンガンのパッチテスト試薬はおそらく鳥居薬品製ですが、これはけっこう濃度が高いらしく、3日後くらいにやめてしまうと、刺激反応が出てしまって、本来陰性なのに、陽性と評価されてしまうことが少なくないようです。
 池田 この場合は、やはり7日後まで見なければいけないのですね。
 中田 そのほうが正確だと思います。
 池田 パッチテストの方法ですが、チャンバーに10~15個の試薬をのせてペタッと貼ったりしますよね。例えば、救急絆創膏などに塗って貼ったりするのは、よくないのでしょうか。
 中田 たぶんその粘着性の刺激みたいなものが邪魔してしまいますし、どこからどこまで貼ったかを評価できなくなってしまうので、やはり専用のユニットに貼っていただいたほうがいいと思います。
 池田 その辺も陽性、偽陽性にかかわってくるのですね。今、鳥居薬品の試薬の話がありましたが、鳥居薬品しか販売していないのでしょうか。
 中田 バラバラの試薬は日本では鳥居薬品しか販売していないのですが、もう一つ、初めから試薬が塗ってあって、そのパネルを貼ればいいパッチテストパネルを佐藤製薬が販売していて、このパッチテストパネルの中にニッケルが入っています。
 池田 では、ニッケル以外のものは金属製ではないということなのですか。
 中田 いいえ、佐藤製薬が販売しているパネルは、ある意味、日本のスタンダードシリーズみたいなもので、その中には、ニッケルとコバルトとクロムと金が入っています。あともう一つは鳥居薬品の製品ですが、水銀が日本人のスタンダードシリーズに含まれています。
 池田 では、マンガンはないのですか。
 中田 マンガンは、たぶん金属アレルギーをきちんと調べようとするところでしかパッチテストをしていないと思います。
 池田 では、ニッケルはともかく、マンガンは少し特殊なパッチテストということなのですね。
 中田 はい。
 池田 それで、7日間貼った後の状態で陽性所見が見られる場合はかなり信頼性が高いということなのでしょうか。
 中田 はい。7日間後に陽性所見が認められるようだと刺激反応とは考えにくいので、陽性と評価します。
 池田 そもそも、金属アレルギーが疑われる症例とはどのような症状なのでしょうか。
 中田 一番わかりやすいのは、例えば、ネックレスやブレスレットなどのアクセサリーでかぶれた人で、まず金属に対するアレルギー反応を疑います。それから、歯に入れた金属のアレルギーで起こるといわれている疾患が幾つかあります。掌蹠膿疱症という極めて難治性の疾患、あるいは扁平苔癬というかなり痒い慢性疾患、こういった疾患は口の中に入れた歯科金属に対するアレルギー反応でも起こると考えられています。
 池田 そういった方に関して臨床症状から金属アレルギーを疑い、パッチテストをしていくのですね。
 中田 はい。
 池田 質問の症例には書いてありませんが、パッチテスト以外に特にニッケル、マンガンに対する金属アレルギーを検査する方法はあるのでしょうか。
 中田 ニッケルは採血検査がありますが、それを行える施設は限られていると思います。リンパ球幼若化試験を行っているところもあるようですが、マンガンはほかの方法では、今のところできないと思います。
 池田 金属アレルギーでリンパ球幼若化試験までやらないかもしれませんね。質問では緑黄色野菜を食べると症状が出るということです。特に、ニッケルはいろいろなものに含まれていると思いますが、緑黄色野菜のほかに、どのようなものにたくさん含まれているのですか。
 中田 緑黄色野菜には確かに含まれていますが、ナッツ類、例えば、チョコレート、ココアにはもっと多量に含まれています。それに納豆などには、たぶん野菜よりも多くの量が含まれていると思います。
 池田 いずれもポピュラーな食べ物ですね。緑黄色野菜というと大雑把な感じがしますし、ナッツといわれたら、もっと特異的に感じますね。緑黄色野菜を食べると胃の膨満感が現れるのならば、ナッツを食べたらどうなのかという話になるのでしょうか。
 中田 そうですね。まず、そちらの方を確認して、ナッツやチョコレートを食べても問題ないといわれたら、ニッケルアレルギーは否定的ではないかと思います。
 池田 なるほど。もし、ニッケルの金属アレルギーがあって、ナッツを食べたら症状が出るとすると、これは即時型なのでしょうか。それとも遅延型のアレルギーなのでしょうか。
 中田 これはどうでしょうか。即時型で蕁麻疹みたいに出るのはたぶん、多くはないと思います。
 池田 では、時間が経っている場合ということですよね。マンガンは検査もあいまいで、含まれている食べ物もあまりわからないそうですが、例えば、ニッケルのアレルギーであれば、ナッツやチョコレート、納豆を食べても、症状が悪くなるということですね。
 中田 そうですね。ニッケルアレルギーに基づいて起こっているとするならば、同じような症状が出現すると思います。
 池田 なるほど、選択的にはいかないのですね。野菜類に金属が含まれているのは、当たり前でしょうけれども、もし、こういった金属に対するアレルギー以外が原因で何かアレルギーが起こるとしたら、そのような病気があるのでしょうか。特に胃の膨満感と書いてあります。
 中田 たぶん原因不明だと思いますが、好酸球性胃腸炎という疾患がこういった症状をきたしうるようです。ですから、先ほど申し上げたとおりにニッケルアレルギーがもし否定的であるならば、一度、消化器内科を受診していただいて、内視鏡検査など受けられてはいかがかと思います。
 池田 好酸球性胃腸炎というのは少し耳慣れないですけれど、好酸球というとアレルギーのときに関係しますね。
 中田 そうですね。たしかに、疫学的にアレルギー性素因をお持ちの方に多いともいわれています。
 池田 では、好酸球性胃腸炎も考えて、精査も必要だということですね。仮定の話ですが、野菜類に含まれている金属で症状が出るとすると、治療法はあるのでしょうか。
 中田 それは、なかなか難しいと思います。治療ではないのですが、やはり、患者さんが食べてみて、問題ないものを、摂取していただくしかないと思います。
 池田 でも、ほとんどすべてのものに入っているので、絶食というわけにもいかないですね。
 中田 はい。やはり、患者さん自身の感覚が一番拠り所になるので、問題のないものを選んで食べていただくしかないと思います。
 池田 先ほどからお話を聞いて、鑑別として必要なのが、ナッツ、チョコレート、納豆。こういったものを食べて、胃の膨満感が出るかどうかが第一ですね。本当に症状が出れば、濃度を薄くしてパッチテストをすると特異的に出たりするのでしょうか。
 中田 マンガンの場合は、先ほど申し上げたとおり、たしかに試薬が濃いようです。ただ、ニッケルは、今貼られている試薬はほぼ適切な濃度になっていると思います。
 池田 では、半分の濃度でやってみるのはどうでしょう。
 中田 なさらなくても、大丈夫だと思います。
 池田 では、マンガンに関しては、今のところ、薄くしても、どうなるかはわからないというところですね。
 中田 これはわかりませんね。
 池田 では、症状から検査に戻るというのは、なかなか難しいところがあるのですね。
 中田 そうですね。
 池田 では今のところは、問診が一番ということなのでしょうか。
 中田 そう思います。
 池田 どうもありがとうございました。