「けいれん」はてんかん発作のほか、「失神」に伴って現れる場合もあります。そして失神の前には特定の「めまい」も現れます。このように関連の強い「めまい」「失神」「けいれん」という3つの症状には、区別が難しい英語表現が数多くあります。
「めまい」の英語表現はdizzinessとなり、患者さんは“I feel dizzy.”や“I have dizziness.”のように表現します。しかし実際にはgiddy/giddiness「クラクラする」やwoozy/wooziness「フラフラする」のように多彩な英語表現が使われます。
ですから患者さんがこういった表現を使った場合、“Could you describe the sensation without using the word dizzy or dizziness?”と尋ねて、そのdizzy/dizzinessがどの種類のdizzinessに分類されるのかを確認します。
患者さんがspinningという表現を使って“I feel the room is spinning.”や“I feel I’m spinning in the room.”などと表現する場合、そのdizzinessはvertigo「回転性めまい」であり、病変部位としてはvestibule「前庭」が考えられます。ちなみにAlfred Hitchcock 監督の映画「めまい」の原題は、このVertigoとなっています。
患者さんが使う表現が限られているvertigoに対し、「平衡障害」であるdisequilibriumには数多くの英語表現が使われます。平衡感覚に異常が生じるので、患者さんはloss of balanceやimbalanceなどの表現を使いますし、「足元がおぼつかない」というイメージでunsteadinessやinstabilityなども使います。病変部位としてはcerebellum「小脳」が考えられますので、ataxia「運動失調」も伴った「酔っ払っているような感覚」も覚えるため、feeling of drunkennessやswayingなどの表現も使われます。
そして患者さんがlightheaded/lightheadednessという表現を使う場合、それはsyncope「失神」のprodrome symptom「前駆症状」としてのpresyncope「前失神」となります。患者さんは「気が遠くなる」「意識を失いそうになる」という意味で“I was going to faint/pass out.”や“I was about to faint/pass out.”のような表現を使います。このlightheadedness/presyncopeの原因としては、後述するsyncopeの原因を考えれば良いわけです。
これらvertigo, disequilibrium, and lightheadedness/presyncopeのいずれにも分類されない場合、そのdizzinessをnon-specific dizzinessと呼称します。その場合には先述したgiddy/giddinessやwoozy/woozinessといった曖昧な表 現が使われます。
以上が「めまい」に関する英語表現ですが、次にlightheadedness/presyncopeの原因となる「失神」に関する英語表現を見ていきましょう。
「失神」の英語表現はsyncopeとなり、その発音は「シンコゥプ」のようなものではなく、「シンコピィ」のようになります。またその定義はloss of consciousnessのような単純なものではありません。「意識を失う」ことを「意識消失」と言い、英語ではこれをloss of consciousness(LOC)と言います。そしてこのLOCを一般的にはfaintingやpassing outのように表現します。このLOCがそのまま継続してしまうと「昏睡」comaとなってしまいますが、突然発症したLOCが自発的に回復する場合、それをtransient loss of consciousness(TLOC)と呼びます。つまりTLOCの定義はabrupt LOC with spontaneous recoveryとなるのです。では「失神」syncopeの定義は何かと言うと、TLOC due to global cerebral hypoperfusion「脳への血流が全般的に低下することで生じるTLOC」となるのです。つまり「何らかの原因で脳全体への血流が少なくなることで起こる突然の意識消失で、何もしなくても意識が戻るもの」がsyncopeの解像度の高い定義なのです。
そしてこのsyncopeには下記の3つの種類があります。
• Cardiogenic syncope「心原性失神」
• Reflex syncope「反射性失神」
• Orthostatic syncope「起立性失神(起立性低血圧による失神)」
cardiogenic syncopeには、arrhythmia「不整脈」によって起こるarrhythmia-related syncopeのほか、心臓の構造の問題によって起こるstructural cardiogenic syncopeがあります。このうちarrhythmia-related syncopeのことをAdam-Stokes syndromeと表現するのですが、語順を入れ替えたStokes- Adam syndromeと表現する場合もあります。
そしてreflex syncopeには下記の3つの種類があります。
• Vasovagal Syncope「血管迷走神経性失神」
• Situational Syncope「状況失神」
• Carotid Sinus Syncope「頸動脈洞症候群」
situational syncopeのきっかけとしてはcoughingやsneezingのほか、micturitionやdefecationでのstrainingが代表的です。このstrainingとは「力を入れること」であり、micturitionは「排尿」、そしてdefecationは「排便」を意味します。
以上が「失神」に関する代表的な英語表現ですが、最後にsyncopeに伴っても現れる「けいれん」に関する英語表現を見ていきましょう。
「けいれん」の英語表現はconvulsionsであり、その定義はa sudden involuntary contraction of the muscles「発作的に起こる不随意運動」となります。この動きは通常、複数であることが一般的ですので、convulsionsのように複数形で表現することが一般的です。
そして「けいれん」が起こっている「発作」の状態をfitやspellなどと表現します。これらは「けいれんが起こっている状態」や「突然意識を失った状態」という意味でも使われ、子どもが「癇癪(かんしゃく)を起こす」という動作もthrow a hissy fitと表現されます。また身体が「ビクッと動く」や「ガックンガックンと動く」様子は一般的にはjerkingと表現されます。
このconvulsionsと紛らわしい用語としてseizureとepilepsyというものもあります。
seizureとはa sudden surge of electrical activity in the brainを意味する表現で、日本語では「てんかん発作」と呼ばれます。これも通常、複数であることが一般的ですので、seizuresのように複数形で表現することが一般的です。
このseizureに関する重要な形容詞としてictalというものがありますが、これは「てんかん発作中の」という意味になります。ここからpreictal「てんかん発作前の」、peri-ictal「てんかん発作前後の」、postictal「てんかん発作後の」のような形容詞も派生しています。
そしてepilepsyとはa condition characterized by recurrent unprovoked seizuresを意味する表現で、日本語では「てんかん」と呼ばれます。
確かに紛らわしい用語ではありますが、これを機会にconvulsionsは「けいれん」、seizuresは「てんかん発作」、そしてepilepsyは「てんかん」という意味になるということを覚えておいてください。