ドクターサロン

池脇

目のかすみで受診される方は多いのでしょうか。

中野

いろいろな症状を訴えられる方がいますが、何だかわからないけれどもかすむという感じで来られる方はけっこういらっしゃると思います。

池脇

いつもの見え方と違う。それをご本人としてはかすんでいるという訴えで受診されるのですね。どうして朝はいいけれども、夕方になるとかすむことが起こるのでしょう。

中野

今先生がおっしゃっていたように、かすみにもいろいろなパターンがあるのです。いいときもあるけれども、夕方になると悪くなってくる。可逆的といいますか、ずっと悪いわけではないというのがこの症状の一つのポイントではないかと思います。今は本当に目を使う時代で、スマホを見ていたり、日本人はまじめな人が多いので、リモートワークでもずっと仕事をしていて一日中何かを見ている人が多いので、やはり可能性としては眼精疲労が一番高いのではないかと思います。

池脇

眼精疲労の場合は肩こりや頭痛などが出てきそうですが、意外と目のかすみだけという方もいらっしゃるのですね。

中野

もちろん目のかすみだけの方もいると思いますし、先生がおっしゃるとおり、肩が凝るとか、人によってはちょっと頭が痛くなってしまう人もいます。この方がどうであるかはわかりませんが、目が疲れる方がいらっしゃるかもしれません。おそらく最初は、起きたときが一番調子が良いので、要するに疲労性のものではないかと思います。

池脇

確かに朝起きてからいろいろなものを見るし、あるいは仕事でコンピューターを見ていると、ピントを合わせる毛様体筋は夕方になるとなかなかうまく使えなくなって、かすみが見えてくるというような流れなのでしょうか。

中野

さらに、老眼世代になってくると、適切な距離を適切なめがねやコンタクトレンズで合わせて見ていないと、より自分をハードな状態にさせてしまって、疲れやすくなっていることもあるかもしれません。

池脇

めがねやコンタクトレンズがその方にあまり合っていないものを使っていると、ますますそういうことが起こりやすくなるのでしょうか。

中野

そうですね。負荷を与えてしまうことになりますから、適切なめがねを使われたらその疲労度がかなり違ってくると思います。

池脇

目のかすみということで、一般的な話を最終的にはうかがいたいと思います。眼精疲労による夕方の目のかすみを予防する手だてはないのでしょうかということですが、あまり目を使うな、ということなのでしょうか。

中野

もちろん使い過ぎはよくない。それこそVDT、visual display terminal症候群というものがあり、今はIT眼症とも呼ばれています。過度に使うことに関しては、点眼薬でいうと一応ビタミンB12が有効だといわれていますが、根本的にいえば、走って疲れたときには休むのと同じだと思いますから、ある程度の時間がたったら少し目を休息させることが一番の解決策になると思います。さらには、先ほどの話のように、適切なめがねをかけていないとか、そういう周辺環境の影響もあるかもしれません。

池脇

この質問の患者さんがめがねをしているのか、コンタクトをしているのかわかりませんが、いずれにしても今までどおりの日常の生活を送っていると、夕方の目のかすみを予防することはなかなか難しいので、多少目を休めることも日中工夫してやっていくのが、対処ということなのでしょうか。

中野

そこで解決できるかどうかだと思います。それで解決できなければ、いよいよ何だろうという話になってくるのかもしれません。

池脇

目のかすみ、この質問でなくても、始終かすんでいるとか、そういう方もいらっしゃると思うのですが、眼精疲労ではちょっと説明できない場合にはどういう背景、疾患が考えられるのでしょうか。

中野

例えば眼精疲労になるぐらい集中してコンピューターを見たり、目を酷使しているときは、瞬きの回数が減ってドライアイになりやすい状況になっているので、眼精疲労と同時にドライアイも絡んでいる可能性もあったりするかもしれません。

ただ、一般的に本当のドライアイというのはとても範疇の広い言葉なので、こういった仕事に伴うドライアイというのではなく、目の病気によるドライアイで、もともと涙の量が少ないときには、朝起きたときから目がかすんでいるとか、目が痛いとか、そういう訴えの方もいらっしゃいます。寝ている間は涙の分泌量が一番少なく、朝方が一番乾いている状態なので、朝から目がかすんでいるというか、何かピントが合わないとなると、病気によるドライアイの要素が強かったりすることもあるかもしれません。

池脇

目の病気によるドライアイの場合は朝から症状があるということですが、ドライアイ以外にも幾つか背景として考えなければいけないような疾患はあるのでしょうか。

中野

ドライアイや眼精疲労や老眼などいろいろなことが総合的にかすみ目の原因になっていきます。エイジングの要素としては白内障というのもあります。本当に見えなくなってきてから手術するのが白内障と思われているかもしれませんが、実はけっこう早い段階から始まっています。手術するほど困ってはいないから、手術適応にはならないのですが、レンズは少しずつエイジングとともにすりガラスになっていくので、そういったことももしかしたら、要素として入っているかもしれません。

池脇

確かに白内障は病気というよりも加齢現象といってもいいのかもしれません。個人差はあるのでしょうけれども、白内障が進んでいく中で、目のかすみというのは比較的初期から出てくるのでしょうか。

中野

白内障は水晶体が濁ってくる場所によって症状が違うので、かすむという人もいれば、暗くなるという人もいれば、逆に局所的に濁り方の強弱がある場合は光が乱反射するので、まぶしいと言われる方もいて、様々です。その中にかすみ目というか、何かピントが合わないというのも当然、複合的な要素の中には入ってくると思います。

池脇

目がかすんで、比較的年齢が高齢の方の場合には、白内障が背景にないかどうかを必ずチェックされるということですね。

中野

見ればもちろんわかるのですが、実際にそういう要素が入っている方もいらっしゃいます。

池脇

ドライアイ、白内障、それ以外に鑑別として挙がってくる疾患は何なのでしょうか。

中野

私たちが最も注意しているのは、不可逆的な疾患で、有病率からも気をつけなければならない緑内障です。例えば白内障では、症状が進んできて困ってから治療すれば挽回できますが、緑内障は白内障と違って、なる人とならない人がいて、少しずつ視野が欠けてくるという病気で、人によっては目がかすむこともあります。この病気は早く見つけて治療介入する必要があるので、私たちは中高年以降の患者さんには緑内障というのを念頭に置きながら、診断しています。

池脇

今の先生の解説ですと、白内障は遅く見つかっても何とかなるけれども、緑内障は全く違うということですね。患者さんがいかに早く医療機関にアクセスして専門医が緑内障を見つけられるかということですが、患者さんは比較的早くに受診する傾向はあるのでしょうか。

中野

なかなかこれが難しいところで、自分でわからないものは、いろいろな検査や啓発活動でいかれるのですが、目というのはよくも悪くも自分で判断ができてしまう。ところが、片方の目だけ悪くなっている場合に、もう片方の目がいいと、そこでカバーするので気づきにくいなど、セルフジャッジできてしまうところが危険です。

池脇

先生方にとっては早く来院してほしいところですが、なかなか難しいということで、かすみ目に関して一般的なことを解説していただきました。ありがとうございました。