ドクターサロン

山内

初めにこのレストレスレッグス症候群について簡単に解説をお願いします。よく何ともいえないような不快感が話題になりますが、これは夜寝ているときだけに起こるものなのでしょうか。

平田

レストレスレッグス症候群は、足を動かさないときに起きやすくなります。ですから、昼間でも映画館や美容院に行って動けない、そういうときに起きますが、夜は、非常に長い時間寝ていて足を動かさないですから、やはり夜間に非常に多いのです。夜間に眠らなければいけないので動かない。動くとよくなるのだけれども、寝るために動かないことになります。そのため夜間に多いのが普通です。

山内

座っていても、じっとしている場合には起こると考えてよいのですね。

平田

そうですね。動けない状態ですね。先ほどお話しした状況のほかに、飛行機などでかなり長い間動けないと不快感が起きてくる人がかなりいます。

山内

動くと治るということですが、それ以外にも、たたいたり、貧乏揺すりしたりすることでも治るのでしょうか。

平田

治るというほどではありませんが、たたいたり、あるいはシャワーなどもいいといわれているのは、実は水が皮膚に当たって刺激を与えることでよくなるのです。ですから、たたいたりすることもいいですし、よく女性の方でご主人に足をたたいてもらうと楽になるというような方もいます。

山内

このメカニズム、最近の知見をご紹介いただきたいのですが、やはりドパミンの産生不良が軸になると考えてよいのでしょうか。

平田

はい。ドパミンは補酵素としても必要です。そして、ドパミンの産生不良は、実はこのレストレスレッグスの場合、脳内でA10という部位はよく知られているのですが、A11という部位のドパミンの作動不全がいわれています。ですから、ドパミン自体がない場合、あるいは鉄が欠乏してドパミンがうまく産生されない場合によく生じやすいと考えられています。

山内

実際、ドパミンの産生を刺激するような薬剤を使って改善するのはほぼ証明されつつあると考えてよいのですね。

平田

そうですね。治験をやっても、24~25例のN数でも完全に1週間で有意差が出ていますので、すごく効くと思います。

山内

遺伝が絡むものもあるようですが、これはいかがでしょうか。

平田

ご指摘のとおりで、遺伝がある人、実は片頭痛などと共存している場合が非常に多いのですが、片頭痛も遺伝性疾患です。レストレスレッグス症候群も遺伝性がある人というのは非常に症状が強いのです。ただ、症状が強いかわりに、プラミペキソールが例えば1錠の服用だけで非常によく効く人たちが遺伝性の人たちだと思います。

山内

こういった症状が強く出るほかの疾患、病態はありますか。

平田

もちろん末梢神経障害が基本にある疾患、例えば糖尿病とか、末梢神経を侵す疾患、あるいは原因はよくわかっていないのですが、COPDなどでもこういうレストレスレッグス症候群になりますし、一番よく見られるのは透析患者さんです。透析をやっている方は二次性のレストレスレッグス症候群が多いです。

山内

診断について、軸は問診のようですが、まだ客観的な方法はないのでしょうか。

平田

実際にはポリソムノグラフィ(睡眠時ポリグラフ)をやるときには患者さんは横になっていて、あまり動けないので症状がひどくなります。そうなると、睡眠時ポリグラフで眠っていないことが指標の一つになりますし、随伴症状として周期性四肢運動障害というものがあります。これは1分間に1回ぐらいの割合で足がゆっくりビクッと動くのですが、そういうものが筋電図のセンサーで取れるので、本当に客観的な診断をするには夜間睡眠ポリグラフを撮ることが一番いいとされています。しかし、日本人でも人口の3~5%ぐらいにレストレスレッグス症候群の方がいますので、その人たち全部に撮っていられません。先ほどちょっとお話しした、じっとしているときの感覚症状、足がほてるとか、アリが這っている感じとか、むずむず脚症候群のもとになった、むずむずしている感覚などがあって、動作をすることによってそれがよくなる、あとじっとしているとダメということを組み合わせた問診で、8~9割ぐらい診断を下せるのではないかと思います。

山内

先生が診ておられて非常に特徴的な症状、この病気を疑ってもいいといったような症状はありますか。

平田

今お話ししたとおりですが、ほかに原因となる疾患が見つからない場合、末梢神経障害の場合は腱反射が低下します。腱反射が全く正常、あるいは感覚障害がもともとあるのですが、実際に触診をしても全く正常で問題ない。糖尿病による末梢神経障害のように、手袋・靴下型の感覚異常ではない。大腿の下半分ぐらいから下にむずむず脚の異常感覚があって、動くとよくなる。実はお母さんもそうだったということが正しいのではないかと思います。

山内

治療ですが、最近出てきたドパミンの作用を増強するものが中心と見てよいのですね。

平田

そうですね。昔はドパミン自体をL-ドーパとして与えていたのですが、L-ドーパで大量に与えると、最初は効いていても、その後にだんだん効かなくなってきて、もっともっと薬が必要になってしまいます。ドパミン受容体刺激薬であるプラミペキソールは、治験を行って、そのようなことはあまり生じないのだけれどもよく効くことが知られているのです。そのほかに末梢神経に直接働く薬としてはα2δリガンドのガバペンチンエナカルビルというものがありますが、こちらは第二選択薬です。やはり第一選択薬はプラミペキソールのようなドパミン受容体刺激薬だと思います。

山内

L-ドーパは副作用も出てきたようですので、プラミペキソールも非常に厳格な投与法にした、と考えてよいのでしょうか。

平田

もともとはパーキンソン病に使う薬なのですが、レストレスレッグス症候群に対しては非常に少量で効くのです。0.25㎎を0.50㎎、2錠、あるいは早く3錠に増量するのは、もともと副作用としてそんなにまれではない悪心、嘔吐などが問題になります。もう一つは0.25㎎1錠ですごく効く群があり、次の日から効いてきてしまうので、この質問のように、もっと薬をもらえれば早くよくなると、早く2錠、3錠にしてほしいとよく言われるのですが、本当は1錠でかなり効いてしまうことも多いのです。

保険収載上、レストレスレッグス症候群は1週間ごとに増量して、0.75㎎までとなっています。その総量を超えて使うと、副作用としてのaugmentationという、症状がかえって悪くなってしまったり、長くなったり、足だけだったのが手にも症状が出てきてしまうことがあります。この質問の答えとしては、やはり1週間で増量して、例えば1錠で効けば、それでそのまま続ける。2錠であれば、そこで終わりとするのがいいのではないかと思います。

山内

そこは厳格にしたほうがいいのですね。

平田

そうですね。あとで支払基金などから調査があったときなども指摘されるのではないかと思います。

山内

鉄の不足が原因の場合、鉄剤を補給することもあるのでしょうか。

平田

実はレストレスレッグス症候群の場合、少なくとも1回は採血して鉄の量、それから中枢神経内に鉄を運ぶフェリチンの量を調べ、鉄あるいはフェリチンが不足している場合はまず鉄剤でいくのが昔からの方法です。

山内

これで治ることもあるのですね。

平田

お子さんの場合は、鉄剤だけで治る方がかなり多いですし、若い方、大人でもそれだけでよくなりますので、鉄剤だけでもいいかもしれません。

山内

どうもありがとうございました。