ドクターサロン

池田

点眼薬、特に花粉症の点眼薬とコンタクトレンズ使用についての質問ですが、どのような場面で他科の医師が眼科医に質問に来るのでしょうか。

藤島

従来は点眼液の添付文書に「コンタクトレンズの上からは使用しないでください」と書いてある点眼薬が多かったと思うのです。しかし、最近は点眼液がだいぶ改良されまして、pHを涙液に近づけたり、浸透圧もほとんど涙液と同じように1.0にしたりという工夫がなされています。その中でも今回のコンタクトレンズや眼表面に対する作用で一番重要なのは防腐剤です。点眼液を腐らせないようにするために従来の薬には塩化ベンザルコニウムが含有されていたのですが、その防腐剤がなくなった点眼液が発売されました。

また、昨今は点眼回数についても、高濃度で1日2回に回数を少なくしたので、コンタクトレンズをする前や、外した後にします。より安全に、かつコンプライアンスもよく、コンタクトレンズを使用しながら、花粉症の目の治療ができるようになってきました。

池田

点眼回数が1日1回、2回になってきて、その人のライフスタイルの中のコンタクトレンズが入っていない時間帯に、点眼していくということですね。

藤島

例えば生活範囲の中で、まだ外せないとか、朝忙しかったとか、そういったときにコンタクトレンズの上からの点眼が可能になっているので、コンタクトレンズユーザーで花粉症の人は、より制約が少なく花粉症治療ができるようになっています。ほかの科の、例えば耳鼻科医や皮膚科医などには、花粉症の時期にはたくさんの患者さんが行き、コンタクトレンズごとの点眼について質問が来ると思うのですが、現状での答えはイエス、使っていいということになります。もちろん高度の炎症では外したほうがいいです。

池田

花粉症はある程度時期が決まっていますが、例えば緑内障の点眼はずっと続きますよね。こうした場合はどのように指導されるのでしょうか。

藤島

緑内障の点眼液も、今のお話のような、2つの特徴がある薬剤がどんどん出てきています。1つは防腐剤をなしにした点眼液で、そのほうが目の表面にはいいわけです。もう一つは点眼回数の減少、1日1回で効くような薬です。しかし、緑内障の薬にはいろいろなタイプの薬があり、また緑内障の程度によっては1種類ではなくて、2種類、3種類と、いろいろな種類を多剤併用する場合が多々あります。それからもう一つ、緑内障は「はい、治りました。今日で終わりです」という話ではないので、目の表面に対する影響を考えると、やはり基本的にコンタクトレンズをしながら緑内障の点眼というのはやめたほうがいいと思います。

また、ドライアイやアレルギーの点眼薬は目の表面で作用すればいいのですが、緑内障は目の中に浸透していって、それで眼圧を下げる作用を行います。そこで、今話した防腐剤をわざと濃くし、言ってみれば、表皮バリアを少し壊してすき間を作って中に浸透させる、そういった作用の薬もあるので、こういった薬はコンタクトレンズ装用者では難しいです。それぞれをほかの科の医師が理解していくのは非常に難しいと思うので、緑内障の薬に関しては、「コンタクトレンズとの併用に関しては、よく眼科の先生に聞いてください」と言われたほうが無難かと思います。

池田

我々もよくアレルギーで聞かれたりするのですけれども、緑内障の薬は確かに1種類であればコンタクトレンズをしないときに1日1回やればいいのですが、2回、3回になってくると、朝やって、5分ぐらい置いてコンタクトレンズを入れて、それで夜、またコンタクトレンズを取って入れるとか、そういう工夫になるのでしょうか。

藤島

従来はそうでした。そういう工夫をしなければ、コンタクトレンズのユーザーが緑内障点眼薬を使用することはできませんでしたし、今も塩化ベンザルコニウムが入っている点眼薬はまだ多いのです。ですが、先ほど言いましたように、わざと防腐剤をフィルターみたいにろ過した点眼薬を開発しているメーカーもあるので、そういったものは比較的自由に、コンタクトレンズ使用時に関する注意をしなくてもできると思います。

ただし、単なる花粉症ではない疾患もあります。例えばアトピーとか、あまりにも充血していて、これは本当にアレルギーかなと判断に困るときがあります。充血の強い場合、例えば春季カタルや、コンタクトレンズによるGPC、といった疾患もあり、そうした患者さんには医師も判断がなかなか難しくなってくると思います。充血の度合いを見て、これはちょっと強いなと思ったら、ほかの疾患の鑑別診断も含めて、やはり眼科医に相談していただいたほうが良いと思います。

かゆみ主体で、いつも鼻水が出るとか、皮膚がかゆいとか、毎年花粉症になるというような方は、季節前からコンタクトレンズの上から点眼してもよいのではないかと思います。

池田

患者さんが誤って防腐剤の入ったような点眼薬をコンタクトレンズの上から使い続けた場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

藤島

一番多く起こるのが角膜上皮炎です。先ほどの緑内障の薬はわざと防腐剤を多くして上皮バリアをスカスカにしているのと同じように、今度は防腐剤が入っている点眼薬でコンタクトレンズの上から使ってしまうと、やはり上皮が傷みます。角膜上皮炎は放置すると怖いです。要するに、角膜が傷むと痛みがひどくなってきますので、コンタクトレンズがつけられない状態が起こると思います。

池田

それが自覚症状なのですね。

藤島

そうです。かゆいとか、ちょっと異物感があるといった状況から、痛いという状況が起こってきますので、そうなるとコンタクトレンズはつけられないと思います。

池田

今はいろいろなタイプのコンタクトレンズが出てきていますね。中には酸素透過度が上がったとか、そういったものと点眼薬との相性というものはあるのでしょうか。

藤島

一部のコンタクトレンズは相性が悪いものがあります。特にカラーコンタクトレンズで、きちんとしたカラーコンタクトレンズはサンドイッチのように色を挟んでいるのですが、通販などではそうではない、吹きつけたようなカラーコンタクトレンズがあります。そういったコンタクトレンズは表面も粗く上皮を傷害しやすいので、それを使用すること自体で角膜の表面が傷みます。そこに何かしらの薬剤がいくと、角膜障害が出る場合があるので、カラーコンタクトレンズの種類によっては気をつけたほうがいいと思います。

池田

コンタクトレンズ自体で傷んだところに薬剤の影響が出る。恐ろしい話ですね。

藤島

そうです。我々のところでもカラーコンタクトレンズの障害の人がけっこう来ます。普通のコンタクトレンズを普通にしていればほとんど問題はないのですが。

池田

1週間、2週間装着、あるいは1日で使い切り、こういったものも差はないのでしょうか。

藤島

やはり毎日、one dayで取り替えるのが一番きれいだと思います。それから、コンタクトレンズは下敷きではないですけれども帯電します。花粉が表面にくっついて、コンタクトレンズによる花粉症というか、GPCという状態を起こす場合もありますので、その辺も少し注意が必要かと思います。

池田

コンタクトレンズにくっついている花粉が花粉症の原因になるのですね。

藤島

そうです。それで目の裏の上眼瞼のところに強いアレルギー炎症を起こす場合があります。

池田

それはちょっと知りませんでした。特に花粉症の時期には、コンタクトレンズユーザーとしては毎日替えるようなものがいいということですね。

藤島

それが一番推奨されますね。

池田

ハードコンタクトレンズを洗浄しながらずっと使用していくのは、毎日洗って洗浄液に入れれば大丈夫ということでしょうか。

藤島

ハードコンタクトレンズの場合は比較的洗って使っていて大丈夫だと思います。

池田

非常に参考になりました。最後に先生から花粉症のときのお勧めのコンタクトレンズというのは何かありますか。

藤島

先生が今おっしゃられたようなone dayのコンタクトレンズで、最近はドライアイを含めて、濡れ布巾のようにコンタクトレンズが涙液を吸収しているレンズがあります。そういったコンタクトレンズで抗アレルギー剤を使えば、コンタクトレンズの中に薬液が入って吸収してきて、少し持ちがいい場合があるかもしれません。

池田

徐放性のようなものですね。

藤島

コンタクトレンズの開発もいろいろ進んでおり、そのコンセプトのコンタクトレンズも出てきます。これは治療とかではなく、例えば毎年アレルギーになるような人が、そういうコンタクトレンズをその時期の前から使っていれば、花粉が飛んだときに症状が抑えられるのではないかというコンセプトです。しかし、いざ花粉が飛んで炎症が起こったら、コンタクトレンズは外して治療が必要になることは強調しておきたいと思います。

池田

すごいですね。潤いを供給するような感じですね。

藤島

そうですね。それから、季節前投与というのがありますね。毎年花粉症になるような人は、先ほどの防腐剤抜きの点眼薬を季節の前の1月ぐらいからコンタクトレンズの上からでも使っていれば、いざ花粉が飛んだときに症状が比較的マイルドに済む可能性が考えられます。

池田

どうもありがとうございました。