ドクターサロン

 山内 胆石は昨今、超音波が進歩したので、健診などでもすぐ出てきます。これをどうしようかというのは我々も頭が痛いところであります。まず先生方の判断として、治療するかしないかはどういったところで決められるのでしょうか。
 良沢 ざっくり言いますと、症状があるかないかです。症状がなければ治療する必要はありません。症状がある、つまり痛み、腹痛があったり、何か違和感があったりする患者さんが治療の対象となります。
 山内 極端にいえば、症状が出るまではウルソデオキシコール酸も含めて積極的な治療はないと考えてよいのでしょうか。
 良沢 普通はないですね。患者さんから石があって気持ちが悪い、何か治療がないかと言われれば、ではウルソデオキシコール酸でものんでみますかということになるかと思います。
 山内 石があるだけですと、例えばがんができるとか、そういったことはまずないのでしょうね。
 良沢 以前は胆石があると胆嚢がんのリスクになるといわれていたこともあって、それを理由に胆嚢摘出術を勧めていた医師もいたかと思いますが、今、そういうことはエビデンスとしてないです。
 山内 ただ例外的に、例えば先生方が画像を見て、この方はがんと紛らわしいからとか、そういった理由で摘出するケースはあるのでしょうか。
 良沢 おっしゃるとおりです。胆嚢壁が厚くなっている方はがんとの区別が難しいことがありますし、胆石が胆嚢の中にたくさんできている方は、エコーで見ても胆嚢の中の評価、胆嚢の壁の評価がなかなか難しいので、そういった患者さんは胆嚢を摘出する適応となると思います。
 山内 非常にシンプルなのでよくわかりました。 さて、それでは症状があるケースに移ってまいります。そもそも現在エコーで無症状の方がたくさん出ていますが、症状が出る方の比率はわかっているのでしょうか。
 良沢 なかなか難しいですね。先生もご存じのように、今、健診で一般的にエコー検査をされることが多いかと思いますが、胆石を指摘される方はたくさんいます。しかし、その中で症状がある方はむしろ比率として少ないのではないかと思います。無症状の方がほとんどかと思います。
 山内 大半の方は無症状ということで、治療の対象にはならないと考えてよいのですね。
 良沢 一般的には治療を勧めることはないです。
 山内 実際に症状がある方に対してなされるものとして、ウルソデオキシコール酸の投与、あるいはESWL、それから普通の胆嚢摘出ですね。この3つに関して、その選択はどういうかたちでなされるのでしょうか。
 良沢 まず一番に勧めるのが外科的な胆嚢摘出術です。そして溶解療法、すなわち薬剤で胆石を溶かす治療、適応としましては直径15㎜未満の胆嚢の中で浮かんでいる石、そしてX線で写ってこない、CP値60未満の、いわゆる石灰化がない石です。なおかつ、胆嚢の機能が正常に働いている。大きくなったり、小さくなったりという機能が残されている患者さん、これが薬剤による溶解療法の対象となります。
 そしてESWL、破砕治療につきましては直径20㎜未満の単発の結石が適応となります。胆石の性状としては、先ほどと同じようにX線に写らない石、純コレステロール結石です。CP値50未満です。なおかつ胆嚢の機能が正常である患者さん。こういった条件を満たす人がESWL、破砕治療の対象となります。
 山内 今の条件をすべて満たした患者さんですね。
 良沢 はい。
 山内 今の条件の中に、我々がよく使っている超音波での診断がありませんでしたが、なかなかCTがない施設も多いかと思います。超音波で代用というわけにはならないのでしょうか。
 良沢 超音波ではなかなかわかりづらいですね。
 山内 逆に言いますと、溶解療法にしろ、ESWLにしろ、かなり適応は限られていると見てよいのですね。
 良沢 限られてきますね。
 山内 ちなみに、ウルソデオキシコール酸は昔からよく使われていましたが、溶解するないし小さくなることはあるのでしょうか。
 良沢 小さくなることはあります。完全になくなってしまう人もいて、その確率として、完全に石がなくなる患者さんは24~38%といわれています。
 山内 そうしますと、ダメ元で使うという発想はあるような気もしますが、そうでもないのでしょうか。
 良沢 溶けてしまう確率が24~38%と申し上げましたが、いったん溶けた後、なくなった後に再発する確率も実は高いのです。溶解後、12年間追跡した結果では、累積で再発してくる確率が60%といわれています。
 山内 ESWLもまた同じなのですね。
 良沢 そうですね。ESWLの場合、完全消失率は60~90%あると報告されていますが、一方で10年間で、55~60%の患者さんは再発してしまうといわれています。
 山内 ただ、理屈では著効した患者さんに関しては、ウルソデオキシコール酸でつなぐとか、ESWLでつなぐこともあるような感じですか。
 良沢 ないわけではないですが、そうなりますと、いったんのむと、ずっとのんでいただくことになりますね。
 山内 胆石があるから、はい、ウルソデオキシコール酸というわけでは決してないのですね。
 良沢 そうですね。
 山内 そうなりますと、予防も大事となりますが、こちらはいかがでしょうか。
 良沢 これまでいろいろいわれていた時代もあるのですが、今は、きちんとしたエビデンスを持って、食事でこれを気をつけたらいいといった、はっきりしたものはないのが現状です。
 山内 食事は昔からよくいわれていたと思うのですが、このあたりのエビデンスはないということでしょうか。
 良沢 今のところエビデンスのある食事はないですね。先ほどの再発を見ましてもむしろなりやすい人というのは、どんなに気をつけていても、いったんなくなっても、再発することがけっこうあるので、むしろ体質的な問題かと我々は考えています。
 山内 以前、糖尿病の方がなりやすいといった説もありましたが、これも今のところ証明されていないのでしょうか。
 良沢 今のところエビデンスはありません。
 山内 コレステロールが高い方に多いというわけでもないのでしょうか。
 良沢 そうでもないですね。
 山内 本当に体質で、原因に関しては今のところほとんどわかっていないのですね。
 良沢 残念ながらそうなのです。ほとんどわかっていないのです。
 山内 そうしますと、予防、あるいは再発予防は全体的にかなり難しいことになりますね。
 良沢 難しいですね。
 山内 最後になりますが、結局胆嚢を取るのがベストウェイと考えてよいでしょうか。
 良沢 そうですね。一番簡単にすっきりする方法ではないかと個人的には思っています。
 山内 胆嚢を取ってしまって何か引き起こされること、例えば下痢が多くなるとか、そういったものはないでしょうか。
 良沢 通常はありません。胆嚢を取ったとしても、今度は胆管が胆嚢の役割をしますので、上手に胆汁をためて、必要なときに出してくれるという働きをします。一般的には胆嚢を取ったからといって何か症状が出るとか、そういったことはありません。まれに胆嚢摘出術後症候群といって、胆嚢を取ったはずなのに、取る前と同じような痛みが出てくるという方は例外的にはいます。
 山内 どうもありがとうございました。