池田
質問には口腔アレルギー症候群、食物アレルギーと書いてあるのですが、プリックテストはアレルギーの何型を調べる検査なのでしょうか。
高山
アレルギーのⅠ型、いわゆる即時型のアレルギーを調べるテストになります。
池田
ということは、じんましんの急性期などでも行うのでしょうか。
高山
そうですね。じんましんの急性期、それから薬疹ですね。薬疹の中でも急性に起こる症状があるとき。あと、アナフィラキシーを起こしたときなどに行います。
池田
Ⅰ型アレルギーということですが、プリックテストというのは一般の医師にはちょっとなじみがないと思います。実際、どのように行っていくのでしょうか。
高山
実際には、まず前段階で準備が必要です。簡単に言いますと、プリックテストは針で皮膚に小さな穴を開けて、その穴のところに抗原を乗せるテストです。穴を通して皮膚に抗原が吸収され反応が生じます。患者さんのもともとの症状が非常に強かった場合は、テストによってアナフィラキシーを起こすこともあるので、テストを始める前に血管の確保をして、エピネフリンなどを用意したうえで行う必要があります。
検査には皮膚に小さな穴を開ける針と、それから陰性のコントロールとして生理食塩水か蒸留水、そして陽性のコントロールとしてヒスタミンが必要になります。そのほかに抗原液を用意します。
池田
その作業はけっこうたいへんですね。薬剤の場合ですと、溶液等に溶かせばいいと思うのですが、食物、特に果物などはどのように行うのでしょうか。
高山
疑っている果物に針を刺します。そうしますと、針の先端に果物の液や果肉が少しつきます。そのままそれを皮膚に刺して、皮膚の中に抗原を入れるという方法で行います。
池田
プリックしてプリックする。
高山
まさしくプリック・ツー・プリックといわれている手技になります。
池田
これは特別な針があるのでしょうか。
高山
プリックランセットといって、縦に刺すとちょうどよく入る太さと長さのものがあります。手に入りにくい場合、私などは出血時間を測るときのランセットを用いていますが、27ゲージの針を使われる医師も多いと思います。
池田
プリック針は、針の部分が短かったですよね。27ゲージだと、どの角度でどのくらいの深さにいくのかなどはどうやって調節するのでしょうか。
高山
わずかに出血するかしないかぐらいに刺したいので、皮膚の表面を斜めにこするぐらいで、少し引っかけて、ちょっと角質をむくようなイメージで傷をつけていきます。幾つかの穴を開けるときに一定にしていかなければならないので、少し手技に慣れが必要かと思います。
池田
では刺すというよりも、どちらかというと表面をこする、そんなイメージなのでしょうか。
高山
そうですね。ブスッと刺すというよりは、どちらかというと、こすり取る。27ゲージだと、そういう手技のほうがいいと思います。
池田
これは慣れた医師でないとちょっと難しいですね。
高山
そうですね。あまり刺し過ぎて出血してしまうとそれだけ抗原の量が多く入ってしまったり、逆に少なすぎると、穴が小さすぎるとうまく入らなかったりすると思います。一定の深さで、ある程度皮膚の表皮に届くぐらいで穴を開けていくことが大切です。
池田
やはり専門医以外にできませんね。
高山
手技として、その後の判定もなかなか難しいので、アレルギーの診断に手慣れている医師にお願いするのがよいと思います。
池田
こするように穴を開けるということですが、判定はどのようにするのでしょうか。
高山
判定は、陰性のコントロールと陽性のコントロールを基準に行います。陰性のコントロールは反応を起こさないのが条件になります。ただ、体質的に針を刺すと少し膨らむという方もいますので、その膨らんだのを陰性コントロールとします。陽性コントロールは、ヒスタミンを乗せたところの膨疹ですね。ヒスタミンを乗せると必ず何らかの反応が出ますが、膨疹といって、蚊に刺されたように膨らむ、皮膚の中に水がたまって膨らむところと、周りに紅斑が出てきます。その紅斑には目を向けず、膨疹の大きさに目を向けます。この膨疹の大きさを測って、ヒスタミンの出た膨疹の1/2以上が出ると陽性、と判断します。
池田
赤みではなくて、盛り上がりのほうを見るのですね。
高山
はい。盛り上がりを測っていただくことが大切です。
池田
その辺がポイントになるのですね。先ほどおっしゃった、ただの生理食塩水等でネガティブ・コントロールだけれども盛り上がる人がいるのですか。
高山
はい、そうです。それを膨疹と間違わないようにしないといけません。
池田
例えば、じんましんのある方は、いろいろな刺激で膨疹ができますよね。プリックのコントロールでもそうなる方がいるということですね。
高山
そうですね。陰性コントロールで膨疹ができる方もいますので、必ず陽性コントロールを置く必要があります。
池田
この質問ですと口腔アレルギー症候群等ではプリックテストで診断がつくのではないかというイメージがあるようですが、実際に口腔アレルギー症候群の診断はどのようにされるのでしょうか。
高山
口腔アレルギー症候群の場合、まずは食物のRASTを測るのが手順ではないかと思います。それから、花粉症を合併している方が多いですので、花粉症の有無と、反応が出ていると思われる食物のRASTをまず測ります。その後で、花粉と果物や野菜がどういう組み合わせで陽性になるかによってアレルギー・コンポーネントというものを調べられるので、それが陽性に出れば口腔アレルギー症候群であると診断されます。プリックは必ず行いますが、一つ食物アレルギーがあるかないかの判断にはなると思いますが、それで口腔アレルギー症候群であると決定するのは難しいかもしれません。
池田
IgE RASTでアレルギーの有無を見るのはよく行われていると思うのですが、今のお話ですと、最初に花粉症になって、引き続きほかの果物等に反応していく、そういう図式なのでしょうか。
高山
花粉と果物・野菜に共通抗原があって、ともに反応するという病態ですので、つながりは当然あります。
池田
単純に食べ物だけで起こっているのではなく、そういう流れがあるのですね。
高山
そうです。食べ物だけでは、食物アレルギーということで、じんましんとして出たり、アナフィラキシーになったりという方もいると思いますが、口腔アレルギー症候群となると、花粉と果物・野菜とセットでの診断になると思います。
池田
口腔アレルギー症候群の場合、スギ花粉から抗原が広がっていくという考えかと思うのですが、どのような食物が口腔アレルギー症候群を起こすのでしょうか。
高山
桃とかリンゴなどがよく反応するものとして知られていると思います。あと、サクランボやバナナで出る方もいると思います。
池田
それは例えばスギ花粉の抗原と同じようなものが含まれているという考えなのでしょうか。
高山
そうですね。同じアレルギー・コンポーネントが含まれているものがグループになっています。だいたいの蛋白は食道と胃を通ると消化されてしまうのですが、桃やリンゴに含まれる一部の蛋白は熱や酸に強くて、そういうものを食べたりするとアナフィラキシーにつながることもあります。通常の口腔アレルギー症候群は、のどのイガイガやかゆみが症状で、食道を通った後は症状を強く起こさないといわれていますが、熱や酸に強いものはおなかまで入ってしまって、腹痛とか下痢、アナフィラキシーにつながる方もいます。
池田
逆にいうと、口やのどまでではなくて、中にはわずかだけれども、アナフィラキシーにまでなるような症例もいるのですね。
高山
そうですね。
池田
そういう人たちをプリックする場合はどのように行うのでしょうか。
高山
最初に言ったように、アナフィラキシーを起こす可能性があるものになるので、アナフィラキシーに備えた点滴をしながらラインを確保し、エピネフリンを用意して、プリック・ツー・プリックを行うことが必要になります。
池田
技術的なことも合わせて、アナフィラキシーの可能性もあるということですから、安易に一般の医師はできないですね。
高山
やはり手技が安定しないと診断が難しいことと、ヒスタミンの陽性をきちんと陽性と取れるかなどもあるかと思います。陰性を陽性と取ってしまうことがあると、患者さんの人生に関わったりしますので、陰性は陰性と判断すること、陽性は陽性ときちんと判断できることが必要です。手技に慣れた医師にお願いするのがよいかと思います。
池田
先ほど共通するコンポーネントという話があったのですが、これは調べることはできるのでしょうか。
高山
外注検査でできると思います。
池田
コンポーネントはどのようなものですか。
高山
コンポーネントはいわゆる蛋白の構造物で、各構造によって名前とナンバーがついています。それをスクリーニングすることができるので、血液を用いて調べることが可能です。
池田
オーダーするときは口腔アレルギー症候群で、この果物とこの果物が反応するという伝え方をすると、検査会社でどの蛋白質に当たるか調べてくれるのでしょうか。
高山
そうですね。ある程度当たりをつけて、だいたいこの果物だとこのコンポーネントだということがわかっているので、そのパターンで調べていきます。
池田
どうもありがとうございました。